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ブータンレポート[2007年02月02日]

070202_01.jpg 50年前の日本がそこにあった。柔和な顔、親切な人々、ものを大事にする心、そして汚れないありのままの自然がそこにあった。チベットとインドにはさまれたヒマラヤ山中の小王国ブータンは、長い間鎖国に近い政策のため地上における数少ない秘境の地であった。近年観光立国を目指し、入国制限数もなくし入りやすくなったとは言え、費用の面から、ビザの面からまだまだ秘境の地といえるかもしれない。だからこそ素朴さや純粋さが心に、自然に残っているのだろう。
 ブータンの入り口は、飛行場のあるパロ。行き方はバンコクからか、コルカタか、カトマンズから飛行機になる。今回はバンコクに前泊し、早朝06:50のドゥルクエアーにてパロに入る。細い渓谷の合間を飛行機は通って10時過ぎにパロに着くと、待ち受けていたのはまるで日本人そっくりのガイド、タンディンさん。黙っていれば間違いなく日本人と間違われる。それも田舎の田吾作さんに(失礼しました)。純朴でそれでいて人懐こい彼とブータンの旅は始まった。

070202_02.jpg1日目は首都ティンプーをかすめて4時間程でプナカへと向かった。標高2300mのパロから、途中3150mの峠、ドチュ・ラまで上り、標高1350mのプナカまで行くこのルートはブータンの様々な自然を楽しむことの出来るゴールデンルートだ。パロ付近ではパロ・チェ川の周りに豊かな稲田とがっちりした伝統的な民家が並び、谷間にあるこの風景はまさに日本の田舎の一風景そのものだ。道の両側には針葉樹林がうっそうと茂っている。

070202_03.jpgドチェ・ラ(峠)にはお茶屋があり、これまた日本人そっくりの娘さん、ツェリンさんにバター茶の接待を受け、身も心も温まることが出来た。今日の目的地はプナカ。標高1350mと低く、自然あふれる亜熱帯気候の地だ。ここでの見所はプナカ・ゾンだが、夕方のため横目に見ながら、今日の宿泊の花があふれるホテル、メリ・プンスム・リゾートへ向かった。


070202_04.jpg2日目の朝はプナカの街を遠くに見えるホテルを後にして、プナカ・ゾンの観光へ出かけた。






070202_05.jpgブータンでの観光の大きな目玉は「ゾン」、それは巨大建築物の城塞だ。寺院と城が一体となり、布教と行政の2面を重ね持っている。ゾンを中心に人々の生活は回っており、厳然とたたずんでいる。このプナカ・ゾンは南北250m、東西80mというブータンの中でも最大級のゾンである。白い壁の上に茶色の屋根、どっしりとした建物、その威容は見ているものに安心感を与える。070202_06.jpg
旧市街とゾンは吊り橋で結ばれており、まさかの時は切り落とす事により防御できる、まさにこれはお城である。






070202_07.jpg次に向かったのは、ティンプー、プナカ、南のチラン、東のトンサへ向かう道が交差する交通の要衝の町、ワンデュ・ポダン。ガソリンスタンドを中心に円を描いて商店が並んでいる。子供達や婦人達、警官やドライバー、沢山の人が集まって生活感のあるにぎやかな町だ。ここのゾンはワンデュ・ポダン・ゾン。小高い丘の上に在り、見事な棚田や町を見下ろしている。070202_08.jpgここでは泊まらないが、この周辺のホテルはトロピカルムード満点のリゾートホテル風でのんびりするにはもってこいの場所だ。
 


 


070202_09.jpg 今日の最終目的地はガンテ。ニンマ派寺院のガンテ・ゴンパがあることからそう言われるが、村の名前はポプジカという。




070202_10.jpg低地のワンデュ・ポダンから山を登って、林を抜け3300mの高さまで行くとそこはおだやかな渓谷の村が目の前に広がる。明らかに氷河によって削り取られた谷底があり、山に囲まれた桃源郷がそこにあった。日本のどこかで見たような山奥の、渓谷の村がそこにあった。行きかう人は目を伏せがちにし、異邦人の僕を見つめながら通り過ぎる。

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070202_12.jpg宿泊ホテルはデワチェン・ホテル。今回手配を依頼した旅行会社の所有ホテルは、こんな辺境の地には想像も出来ない木目調のロッジの贅沢なホテルだ。大きなストーブを前にして、オグロヅルの調査に日本から来られている百瀬さんと夕食をともにし、いかにこの地が鶴の飛来地として重要な所であることを知りなぜか胸が躍った。部屋に帰るとドアの外に薪が沢山積まれている。温かいお湯のシャワーを浴びていると突然明かりが消えた。自家発電のため10時には消灯だった。真っ暗の中どうにかシャワーを浴び、ろうそくの火をつける。ロマンチックな雰囲気と思っているうちにだんだん寒くなってきた。暖炉の火も消えかかりかなりの寒さになった。沢山の薪の意味がようやく分かった。ところが火を焚くのがめちゃくちゃ面白い。薪の重ね具合や空気の通し具合でうまく燃えたり、だめだったり。ベッドに入っても3時間で火は消えてしまうので、何回も起きて火をおこしたが忘れられない思い出となった。

070202_13.jpg 3日目はティンプーに向かう。朝は、鶴の研究センターに行き、昨夜の百瀬さんの話を思い起こしながらビデオや資料を見る。センターの前方には遠く離れてはいるものの、はっきりと朝のえさを食べている沢山のオグロツルが見える。周りには人家もあるが逃げもしない。うらやましい環境がまだここに残っている。ここの住民は発電所の建設に反対して作らせなかったそうだ。070202_14.jpg便利より自然を選択した。これが桃源郷かもしれない。
名残惜しいポプジカを後にして、首都ティンプーに向かう。長い移動を楽しい一時にしてくれたのはガイドの歌だ。ブータンの民謡みたいな歌を何曲も歌ってくれた。やさしい、和ませる、牧歌的な歌だった。日本の歌を歌ってくれとせがまれ一緒に「上を向いて歩こう」を歌う。加山雄三の「旅人」も歌った。他にも歌ってあげたかったが歌詞が出てこない。しょうがないからメロディーでごまかした。はたして今の日本を代表する歌は何なのか真剣に考え、帰国後は「涙そうそう」を一生懸命練習した。次回はタンディンに聞かせてあげようと。




070202_15.jpgティンプーはブータンの首都だが、小さな温泉町か田舎町しか見えない。メインストリートを夜散歩したがまったく危険を感じない、のんびりした安全な町だ。




070202_16.jpgここの中心はなんと言っても「タシチョ・ゾン」。国王のオフィス兼、ブータン仏教の総本山であり、その大きさや厳然としたたたずまいは人々を圧倒する。翌日は朝市やアーチェリーの大会を見たりしたが、人々の顔は全くあせったところがなく、柔和で、それでいてきりっとしている。又こんな所にもゴルフ場があったのには驚いた。回りの景観や雰囲気とはあわない。


070202_17.jpg4日目は空港のあるパロに戻ってきた。平坦な土地が広がり、水田と伝統的民家がマッチし、遠くにはヒマラヤを眺める景色は実に美しい。




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後ろにタ・ゾン(国立博物館)を控え、前にはパロ・チェ川を従える、パロ・ゾンの姿はこれまたほれぼれする。





070202_19.jpgウゲン・ペルリ宮殿の周りに繁る柳並木道を歩くのも実にいい。500mほど垂直に切り立った岩壁の上にあるタクツァン僧院はまさに聖地としてふさわしい。







4泊5日のブータンの旅を終えて考えるのは、ブータンを秘境の地としているのはこれまでの入国制限や辺ぴな地理的条件だけでなく、ブータンという国がどんな国を目指しているところに拠るのではないかと思う。日本の田舎に行けばよく似た風景があるが、風景だけで中身はまるっきり文明化された生活だ。ブータンでは美しい自然を大事にし、自然と共存している。便利さよりも環境を大事にする事が自分達にとって重要だと信じている・・・という考え方が秘境かもしれない。多額の借金を抱え、決して人の暮らしも楽ではないが、その顔には笑顔が絶えない。その借金も水力発電による電力をインドに販売することでどんどん減っていくという。また30~40年前から小学校から授業はすべて英語で行っているのでほとんどの人は英語をしゃべる。観光立国を目指す基礎も出来ている。環境を守る事が、単に自分のためでなく、これからの観光誘致のための大きな武器となることも明らかだ。せっかく素晴らしい自然を持つ日本のことを考えると恥ずかしくなる。そんなブータンがいつまでも今のままであって欲しいと願い、旅は終わった。

2005年11月22日~26日 本山泰久

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