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幸せと旅の原点探しにブータンへ 交易路をゆき中世の旅人になろう ~チョモラリ・トレッキング~[2014年11月07日]

私にとって初めての海外旅行はネパールのトレッキングで、そこでは毎日がカルチャーショックの連続で深い感銘を受けた。それがきっかけで色んな国に行くことができる仕事がしたい、とファイブ・スター・クラブにて働くこととなったのだ。それ以来、たくさんの国に行くこととなっても本格的なトレッキングに行くことはなかったが、今回15年ぶりに本格的なトレッキングに、ブータンにて挑戦することとなった。15年も前なので体力の衰えも心配だったけれど、トレッキングに挑戦することで私の人生という旅の目的の原点、みたいなものに戻れれば、と心の中で考えていた。

ルートはブータンで一番人気のチョモラリ・トレック。チョモラリは「女神の山」と意味し、西部チベット国境にある高峰(7,314m)で、ブータンを代表する山だ。といっても今回この山に登るのではなく、氷河地形の中にあるジャンゴタン村のチョモラリベースキャンプ(4090m)を目指す。チョモラリ、ジチュダケなどブータンを代表する山々の展望が楽しめる10月の旅がお勧め。5,6月にはブータンの国の花、ブルーポピーを目的にする旅人も多いそう。峠がなく、徐々に高度を上げていくので高山病の恐れが少なく、体調が悪くなっても下山しやすいなど、初心者でも挑戦しやすく、景観も素晴らしい。今回はこのトレッキングについて紹介したい。

 ブータンのトレッキングはネパールとは違い、途中に山小屋やカフェなどがない。よってすべてテント泊となり、必要な食糧やテントは全てスタート地点から持っていく。馬が運んでくれるので私たちはカメラや水筒などだけ持って歩くだけ。今回のトレッキングでは日本語ガイドさん、コックさん、アシスタントコックさん、馬の世話係さんの2名、馬8頭が我々の世話をしてくれた。昔の旅人と同じようにキャラバンを組んでの旅は何とも旅情を誘い、スタッフとも旅の仲間として自然に距離が近くなる。これがブータンでのトレッキングの魅力なのだ。

トレッキング1日目 (歩行時間約5時間、17キロ) 
08:30 パロのホテル出発
08:50 ドゥゲゾン到着 (2400m) ドゥゲゾンを少し観光
09:30頃 ドゥゲゾンを出発
12:15 ランチ
13:00 出発
15:00 シャナ 到着 (2850m)

2012年にドゥゲゾンから今日の宿泊地のキャンプサイトのシャナまでの農道が開通した。帰りはシャナから車で帰るが、今回は敢えて高度順応のために往路は徒歩で向かう。他の高度順応の方法としては例えば、パロで午前にだいたい3000mにあるタクツァン僧院まで歩いて行き高地になれ、その午後にドゥゲゾンからシャナまで車で行く、という方法もある。シャナまでの道は舗装されていないが農道なので歩きやすく、急な登りもなく、トレッキング初めのウォーミングアップとしてもよい。川が流れ、途中村々を通るので農家も見かける。景色もよい。10月下旬はちょうど稲刈りの時期で、鎌を使って手作業で稲刈りをしている場面、稲刈りの途中でお昼ご飯をみんなで食べている光景も見ることができた。

川と田園風景が美しい

遠くに山々がみえる

ちょうど稲刈りの時期

お昼時になり待ちに待ったランチ!ランチは私たちが出発した後、コックさんが作ったお弁当をアシスタントコックさんが追いかけてきて持ってきてくれる。おかずが3品とご飯、果物と暖かい紅茶を用意してくれた。好きな食材、もしくは嫌いな食材があれば前もって伝えておこう。コックさんの腕は確かでこのトレッキング中、食事が楽しみでいつも満腹に食べていた。自然の中で食べる、たくさんの人の手がかかった豪華な昼食はどんなミシュランのレストランで食べるよりも贅沢に違いない。
<217 ガイドさんが昼食を用意してくれる>

15:00頃にこの日のキャンプサイト、シャナに到着。到着するとまず、クッキーとミルクティーやコーヒー、ココアなどの温かい飲み物を用意してくれる。ここ、シャナに我々のテントを設営するのだが、我々が寝るテント、我々が食事するダイニングテント、コックさんが料理を作るキッチンテント、トイレのテントを私たちだけのため、今晩だけのために設営するのだから有難いやら申し訳ないやらの気持ちで、スタッフの設営するのを見守る。日が暮れる前に顔と足を洗うためのお湯を用意してくれる。お風呂には入れないけど、暖かいお湯に足をつけるだけでかなりリフレッシュできる。日が暮れて待ちに待った晩御飯。スープから始まり、おかず3品とご飯、デザートと用意してくれる。山の中でこれだけ至れり尽くせりで、これ以上ないような贅沢だ。ブータンの街中で食べるホテルやレストランの食事よりも数段おいしい!空に輝く星はパロで見るよりもすばらしい。心地よい疲れの中、ぐっすり眠ることができた。

キッチンテントを設営するコックさん

左からキッチンテント、ダイニングテント、我々のテント

お馬さんもご苦労様 袋に餌をいれると他の馬とも喧嘩しない

大自然の中での美味しい食事

2日目 (歩行時間約7時間、21キロ)
07:15 シャナ出発
12:00 ランチ
12:45 出発
15:00 タンタンカ (3630m)

翌朝、ガイドさんがベッドティーを用意して起こしに来てくれ、顔を洗うための暖かいお湯も用意してくれる。朝食もパンや卵料理、ソーセージ、コーンフレーク、おかゆなど毎日違うメニューだ。
2日目は行程の中で一番たくさん歩く日。といっても、普段日本でハイキングに行く人にとってはさほどハードではないと思う。針葉樹の森の中をひたすら登る。この日の行程の風景は日本の山登りと少し似ている。タンタンカはキッチンとダイニングの小屋があり、早く到着したグループのみ使える。水洗便所もある。標高は3600mを超えるため、朝夕はとても冷える。この晩はなんと湯たんぽを用意してくれた。湯たんぽとスタッフの気遣いの温かさを感じながら眠りについた。

荷物を運ぶ馬とすれ違う 山道では馬やヤクが優先して通る

川を何回も渡る

タンタンカに到着

タンタンカのキャンプサイト

我々のテントを用意してくれる

3日目 (歩行時間約5時間 19キロ)
07:15 タンタンカ発
12:00 ジャンゴタン(チョモラリ・ベースキャンプ 4090m)到着 ランチ

下記はオプションで、余力のある方のみ。通常は翌日に行くことが多い。
氷河湖のツォプ湖へ (歩行時間約3時間半)
13:00 ジャンゴタン発
15:00 ツォプ湖到着
16:30 ジャンゴタン到着

起床すると晴天で、昨夕には見れなかったチョモラリが見えた。

輝くチョモラリ

朝はまだ霜が降りている。3700mあたりでヤクが姿をみせはじめる。

3700mあたりでヤクが登場

この日のジャンゴタン(チョモラリ・ベースキャンプ)までの道のりは景観が素晴らしい。5時間ほどの道のりだが、写真を撮るのが好きな人はきっと何度も足をとめてしまうので、もう少し時間がかかるかもしれない。途中で小学校を通る。授業の様子を見せてもらうため授業中にちょっとお邪魔させてもらった。授業中なので覗くだけにするつもりが、先生が授業を中断して、子供たちとの交流の時間を作ってくれて恐縮してしまった。ブータンの小学生は英語が上手。旅行中に何度か話すことになるのだが、挨拶の順番は必ず ①Hello, madam. ②How old are you? ③What’s your name? という順番で、いきなり年を聞かれるので、出だしから、うっ・・・と答えに詰まる。別に気にしてないんだけどね。ブータンの学校ではこの順番で習うのかな?

素晴らしい景観に何度も足をとめてしまう

美しい山々

景色に見とれて疲れは感じない

英語が話せる子供たち

授業中なのに快く写真撮影に応じる子供たち

ジャンゴタンに到着 ガイドさんと

通常だとこの日はジャンゴタン到着後、のんびり過ごすのだが、よくばりな私はジャンゴタンで昼食を食べた後、4330mの氷河湖ツォプ湖まで足を延ばすことにした。5,6月はブータンの国の花、ブルーポピーが咲き乱れるそうで、これを目的に旅する人も多いという。最初の30分は急登があり、さすがに4000mを超えての上りはきつい。ゆっくりゆっくり、休みながら登る。途中、高地でしか会えないブルーシープに遭遇!見事に周りの風景の色と同化していて、写真だとよけい見えにくい。湖近くにて一気に天気が崩れ、雹がふってきた。そんな中、ようやくツォプ湖に到着。ツォプ湖へはジャンゴタンから往復3時間ほどの行程で、多くの人は翌日の終日フリータイムのときに行くようだ。

かなりの急登

ブルーポピーじゃないけどきれいな高地の花

野生のブルーシープ

雹が降ってきた

ツォプ湖にて

4日目
08:45 ジャンゴタン出発
11:45 チョモラリとジチュダケが見えるピークに到着
14:00 ジャンゴタン到着

朝起きると昨夕は見えなかったチョモラリが光り輝いていた!周りはまだ薄暗くても陽が一番先にチョモラリに当たるものだから白銀に輝いている。トレッキングの出発地のドゥゲゾンからはチョモラリの頂上がちょこっと見えただけだが、ここからはとても近く真正面に見える。この瞬間、3日間かけて少しずつ登ってきた達成感をさらに強く感じた。この日は天気もよいので、テントの外にダイニングテーブルを置いてチョモラリを見ながらの朝食タイム!!この瞬間で、世界中で一番素晴らしい景色の中で一番美味しい朝食を食べているのは我々に違いない。

白銀に輝くチョモラリ

チョモラリを見ながらの朝食は最高!!

この日はジャンゴタンから日帰りでチョモラリとジチュダケの両方を臨めるピーク(4800m)に向かう。空気が薄くて少し登っただけでも息がきれる。少し進んでは休憩、少し進んでは休憩の繰り返し。だがその度に見下ろすジャンゴタンのキャンプサイトはどんどん遠く、小さくなっていく。2時間ほど登り続けてようやく到着。ここからジチュダケとチョモラリ、周りの山々を臨む。ついにここまで来たのだなぁと感動で胸が熱くなる。ガイドさんもここまで来たのは初めてだそうで、みんなはしゃいでしばし写真の大撮影会が続く。ブータン人勢は少しポーズをつけて山をバックにアルピニスト風に。我々日本人勢はあくまで自然な風を写真におさめてもらう。ブータン人と日本人はたくさんの共通点があって、性格の面だと恥ずかしがり屋、はにかみ屋、礼儀正しいところ、まじめなところ、感情を顔にあまり出さないところなどとても似ているなぁ、と思ったけれど、写真を撮るときのポージングはちょっと違うかな、なんて思ってみたり。

ジチュダケが見えてきた

少しずつ少しずつ登って行く

ジチュダケと氷河湖

ジチュダケをバックにみんなでハイポーズ

あんなに遠かったチョモラリもこんなに近くに

キャンプサイトも遥か下に

ジャンゴタンを見下ろす

5日目
08:00 ジャンゴタン出発
12:00 タンタンカ到着 ランチ
13:00 タンタンカ出発
15:00 テント設営地に到着

 朝、テントをでると辺り一面、雪景色に!寝ている間に深々と雪がふり、風景をすっかりかえてしまった。雪が降るのが昨日でなくてよかった。同じ道を今日から折り返して帰って行くのだが、山々は雪化粧をして我々に違う美しさをみせてくれたのだった。どの山でも同じだけど登りは大変でも下山はあっという間。どんどん下山していくうちに積もっていた雪は姿を消したが、地面はぬかるんでいて滑りやすいので慎重に下りていく。今日のテント設営地はキャンプサイトではなく、川の近くの少し開けた場所。今日はトレッキングの最終泊の夜なので、今までお世話になったガイドさん、コックさん、馬の世話係の人達とお酒を飲むことになった。といっても、ブータンの人はお酒を特別な日やお正月しか飲まない人も多く、南地方出身の人は比較的飲むそうだ。だから、私たちとスタッフ二人だけがブータン産ワインを飲んだ。ここで、コックさんのコックさんになるための勉強の話や馬の世話係のスタッフに馬について質問したり、ブータンの歌を歌ってもらったり、それに合わせて一緒に踊ったり、と思い出に残る楽しい時間を過ごさせてもらった。
ブータンではたくさんの民族がいて言語がたくさんあり、公用語がゾンカ語、英語なのだが、ネパール語も話せる人が多く、私が15年前に覚えたネパール語もちゃんと通じたし、ネパールの歌を歌ったり、踊ったりで、ネパール語もコミュニケーションの一部となった。
ネパールでトレッキングしたときも素晴らしい景色にびっくりしたけど、やっぱり一番心が動くのは私の知らなかった場所、文化の中で全く違う価値観をもって暮らしている人と話をして少しだけでも時間と考えを共有することだ。そのことで自分自身と自分の周りの環境を違った視点で見直すことができる。旅の意味や大切さの一つってこういうことだろう。色んな人と新しい自分とで出会うために旅をみなするのだろう。やっぱり。

一晩ですっかり雪景色

往路とはすっかり違う景色になった

木材を運ぶヤクたち

晩御飯の用意をするスタッフのみなさん

最後の晩はみんなで乾杯

みんなで歌って踊ろう

思い出に残る夜をありがとう

 
6日目 
09:00 出発
12:00 ランチ
13:00 出発
14:00 シャナ到着
15:00 シャナを車で出発
16:20 ドゥゲゾン到着
16:40 パロ到着
18:00頃 ティンプー到着

今日はトレッキング最終日。1泊目に宿泊したシャナまで行き、帰りはそこから車で移動する。シャナに到着し、コックさんたちは別の車で、馬の世話係さんは歩いてパロ近郊の自宅まで、我々は車でティンプーへとここで今まで一緒に旅して来た仲間は別れを告げなければならない。せっかく仲良くなったみなさんともう会えないかも、と思うと悲しい。が、馬の世話係の一人が「また一緒にトレッキングに出かけてまた一緒に踊ろうよ」と言ってくれた。そうだね、またこのメンバーでまたトレッキングに出かけたい。叶うかわからないけど、そう答えた。生きていたらまたきっと会えるに違いない・・・・。と思っていたらなんと実際、この日の翌日、ティンプーの街中を観光していたらコックさんとばったり出会ったのだ。素敵な偶然に驚き、再会を喜んだのだった。

最後にお世話になったみなさんと記念撮影

 ブータンの幸せ指数の話はあまりにも有名。「自殺する人が少ない=幸せな人が多い」と必ずしも言えないだろうけど、ブータンの昨年の1年間の自殺した人は二人。日本の年間の平均のそれは3万人。人口に差があるにしても、ここまで聞けばやっぱりブータン人は幸せな人が多いのかな?と思う。 ガイドさんに「ブータン人はやっぱりみんな、幸せなんですか?」と聞いたところ「うーん、人によります。」 との答え。そりゃ、そうだよね。「幸せ」自体が人によって違うだろうし、感じ方も違うだろうし。「幸せ」が何かなんてそう簡単に答えはでないけれど、はっきり言えることはブータンを旅して、この国と人々は私を幸せにしてくれた、ということ。楽しかったよ、ブータン。幸せをありがとう、ブータン。
 キャラバン隊を組み、中世の旅人になれるブータンのトレッキングであなたも幸せになってください。

 最後にトレッキングに必要なものを下記に挙げてみた。

トレッキングの必須アイテム
予備の電池バッテリー(トレッキング中は充電できない)、ヘッドライトとその電池、手袋、帽子(日除けのものとニット帽)、タオル、サングラス、日焼け止め、リップクリーム、常備薬、のど飴、靴下(普通のものと暖かいもの)、ヒートテック的な下着(かなり暖かいもの)、登山靴、登山靴以外の靴(テントに到着した後に役に立つ)、行動食(多めに持って行ってガイドさんたちにあげても)、ゴアテックスの類の完全防水の上下、ウェットティッシュ、水筒、腕時計、デイパック、ボールペン、トイレットペーパー、ポケットティッシュ、寝袋(氷点下でも寝れるもの)

あったら便利なもの
ホッカイロ、ランタンの代わりになるもの(夜のテント内で使う。ヘッドライトにかぶせてランタンにできるような便利アイテムもある)、スーパーの袋(ゴミ袋にしたり、洗濯物をいれたり)、体をふくサラサラパウダーシート、乳液、ハンドクリーム、ウェットティッシュ、ダイアモックスなどの高山病の薬(心配な人のみ、事前に副作用について問題ないか要確認)、水に溶かす粉末状のお茶、登山用のスティック、湿布薬、足の疲れをとる湿布、アミノ酸等のサプリ、簡単な日本食、高度計、レジャーシート(ランチのときに)

ブータンのお勧め

チョモラリトレック ★★★★★
 ・・・山好きなら是非参加して欲しい!ガイドさんとスタッフが至れり尽くせりのお世話をします!山の中で最高の贅沢を。

タクツァン僧院 ★★★★
・・・・時間がない人も絶対いってほしいが、割とハードで標高も高く息がきれやすい。ハイキングシューズで参加したい。

ティンプーのモモ屋さん ★★★
・・・・時計塔の近くにあるガイドさんお勧めのモモ屋さん。むちゃくちゃうまい!!お昼時も地元の人でこんでいて、地元の人と相席も楽しい経験!

2014年10月 辻理恵子

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