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祝開通!シルクロード新幹線に乗って~中国辺境紀行 日本に最も近いチベット文化圏アムドと悠久のシルクロード~[2015年11月09日]

中国人民の朝はダンスから始まる

中国の辺境では羊が道を埋め尽くすのも日常茶飯事

陽気な清真食堂(イスラム教のレストラン)の店員さん

古代から現代にいたるまで、著名な探検家をはじめ数多くの人々を魅了してきたシルクロードの道。悠久の歴史を持つこの道に、2014年12月新たな歴史に一ページが加わった。
なんと甘粛省蘭州から新疆ウイグル自治区ウルムチまで高速鉄道(通称シルクロード新幹線)が開通したのだ。
私自身、シルクロードは何度も旅行した大好きな場所。西安からウルムチまでの列車で、リクライニングのきかない狭苦しいボックスシートで二晩過ごすという、今思い出しても苦痛でしかない経験もした。
そんなシルクロードに今や新幹線なんて・・・。うれしいような、さびしいような。

<シルクロード新幹線乗車レポート>
それではさっそくシルクロード新幹線をご紹介。今回乗車したのは青海省の省都西寧から新疆ウイグル自治区のトルファンまで。
実はこれまでの在来線では西寧から出ていたのは蘭州・チベット方面への列車のみ。今回の新幹線開業で、初めて敦煌やウイグル方面への列車が走るようになり、青海省とシルクロードの周遊旅行がしやすくなった。これもシルクロード新幹線の大きなメリット。

日本人にあまりなじみがなく、観光客がまだまだ少ない西寧だが、他民族が共存しているのがこの街の特徴。チベット人やモンゴル人などの少数民族も住んでいるが、目立つのはなんといってもイスラム教徒の回族。男性は白い帽子、女性はスカーフをかぶっている人が多いのですぐ分かるはず。

青海省最大のモスク、東関清真大寺。「清真」は中国語でイスラム教の意味

大きいモスクの周りには必ずイスラム教徒の市場が

イスラム教徒と言っても顔立ちは漢民族と同じ。しかし、遙か昔シルクロードをたどってたどり着いたアラブ・ペルシャ商人が中国人と融合して誕生したというなかなか興味深いルーツを持つ。彼らの姿を見るたび、「古代から現代までつながる遙かなるシルクロード」的などこかで聞いた壮大なキャッチコピーが頭に浮かんでくるぞ。

さて、それではシルクロード新幹線に乗ってみましょう。

新幹線開通を機に去年改築された西寧駅

空港のような駅構内。チベット鉄道始発駅でもあり、ラサ行きの列車も出ている

日本と違って中国ではいつでも誰でも駅やホームには入れるわけではなく、駅入口では仰々しい荷物検査とボディチェックがあり、ホームへは列車到着直前しか入れない。といっても切符を持っていればすべてスムーズにことが進む。

ホームへ降り、ほどなくすると列車が到着。これがシルクロードの歴史を変えた新幹線だ!

なんともかっこいい顔立ち

今回乗車したのは2等車で、座席は日本の新幹線自由席と同じく2列+3列。1等車は2列+2列の配列で、シートピッチが10cmほど変わるとのことだったが、あとはほぼ違いがないとのことだった。

2等車の車内

速度や気温まで表示できる車内案内。西寧を出たときは0度近かったのに、敦煌近くまで来るとあっという間に20度越え。

シートポケットに機内誌ならぬ車内誌があったので、とりあえず読んでみる。といっても当然すべて中国語なのだけど、漢字を読めばまあなんとなく意味は分かる。全列車の時刻表もついているし、「私たちは快適な車内づくりに貢献いたします」的な社会主義国とは思えないスローガンまで載っていた。

楽しみにしていたのが車窓だが、これは期待通りで全く飽きなかった。西寧を出るとすぐに草原地帯に入り、見事な雪山をバックに羊やヤクの放牧なんていうチベット度100%な景色が見られる。長い祁連山脈を抜けて甘粛省に入ると今度は砂漠地帯。古代のシルクロードの一部分でオアシス都市が連なる河西回廊をかけ抜けていく。

だいたい30分~1時間に1回の割合で途中駅に停車する。が、街の郊外ばかり走っているのに加え沿線の開発がまだまだ進んでいないようで、駅前にあるのはだだっ広い広場と建設途中の集合住宅、以上!といった駅がほとんどだった。鉄道ファンや北陸新幹線ユーザーの方は、途中の駅がほぼ安中榛名駅状態とイメージしていただければ。

同じく気になる車内販売。飲み物やお菓子ならときどきやってくるワゴン販売で購入できる。
真ん中あたりの車両には売店もあり、ここでお弁当が購入できる。だがメニューには10種類ほど載っているのに、今回用意できるのは1種類のみとのこと。突っ込みを入れたかったが中国語が全くできないので心の中で突っ込んでおいた。
ただ注文したお弁当をあたためてくれ、あとで席まで持ってきてくれるといううれしいサービス付き。

鶏肉のお弁当25元、スープ5元。さすが中国だけあって美味しい

西寧から敦煌に近い柳園南駅までは約6時間。駅から敦煌までは現在車で2時間半かかり、そのため新幹線で敦煌を訪れる人はまだまだ少ないとのこと。ただ工事中の道路が開通するとさらに早く行けるようになるとのことで、この駅も便利になるはず。

柳園南駅からも荒涼とした砂漠地帯が続くが、新疆ウイグル自治区に入るとその景色が徐々に変わっていき、田畑や河川が車窓に登場する。
ときどき現れる村や街の様子もこれまでの漢民族の街とは変わり、土壁の平屋建てやモスクが目立つ。

新疆ウイグル自治区最初の駅ハミからは、駅名にウイグル語表記が

そして柳園南駅から約4時間でトルファンの最寄り駅、トルファン北駅に到着。

ウイグルの街に合った、なかなかすてきな駅舎

今回、合計約10時間シルクロード新幹線に乗車したが、日本の新幹線と変わらないほど快適だった。シートピッチは2等車でも十分な広さで、揺れもほとんどない。時間も正確で、飛ばしすぎたのか予定時刻より少し早く到着する駅もあるほど。また必ず英語が話せる乗務員さんが乗車しているようなので、中国語が話せなくても安心だった。中国の列車といえば安全面が気になるけど、最近は事故も起こっていないとのこと。

古代の旅人が何日もかけて旅したであろうシルクロードを、新幹線で一瞬で駆け抜けることができるという贅沢。ぜひ体験してみては?

<チベット文化が色濃く残るアムド地域へ>
今回訪れた青海省は、チベット人が人口の2割を占め、その割合以上にチベット文化の影響を大きく受けている地域。
そもそもチベット人といえばラサなどがあるチベット自治区にばかり住んでいるのでは?というイメージだけど、実際はチベット自治区に隣接する青海省、四川省、雲南省にも多い。青海省と四川省北部のチベット人エリアはアムド地域と呼ばれている。
現在最もチベットで信仰されている宗派ゲルク派の始祖ツォンカパはここアムド出身。そして最も有名なチベット仏教僧、ダライ・ラマ14世もアムド出身である。

そのアムド地域にある街、同仁(レゴン)へ。西寧から車で約3時間、日本に最も近いチベット文化圏といえそうだ。
ここで有名なのが仏教美術。中でもタンカ(チベット仏教の仏画の掛け軸)作成が盛んで、その質の高さはチベット中から一目置かれるほど。

同仁郊外にある吾屯庄(センゲション)村には仏教美術博物館があり、数多くのタンカを鑑賞することができる。

高いタンカだと1000万円以上もするとか。。

さらに博物館に隣接してタンカの学院もあり、教室を見学できる。
教室内には作成中のタンカがずらり。まさに絵師によって命を吹き込まれようとしているところだ。

日本ではまずお目にかかれない、貴重なタンカの教科書

お坊さんでなくても絵師になることができるため、漢民族や欧米人の生徒もいるとのこと。
やっぱりタンカ絵師になって一攫千金ゲットしたいって考えている生徒さんもいるのかなあ。いや、そんな煩悩にまみれていてはこんな繊細な絵を描けないだろうなあ。。。

もちろん同仁にはチベット寺院があり、こちらも見所になっている。ラサなどの寺院では完全に観光地化してしまったところもあるとのことだが、ここの寺院は地元の参拝客ばかりで旅行者が少なく、荘厳なチベット仏教そのままの雰囲気が味わえた。

郭麻日寺(ゴマルゴンパ)にあるアムド地域最大の仏塔

アムド地域の名刹で同仁中心部に位置する隆務寺(ロンウォ・ゴンパ)

新旧2つの仏塔が印象的な吾屯下庄寺(センゲマンゴ・ゴンパ)

10歳の少年僧と。6歳から修行しているとのこと

日本アニメ大好きで、ワンピースと進撃の巨人で独学で日本語勉強中の修行僧。
お坊さんにもいろいろいらっしゃるんだなあ。

チベット仏教はどこか怪しく、神秘的。そんなイメージを持つ方も多いだろう。ヤクのバターでろうそくを燃やしているためお堂に入ると独特のにおいがするし、こちらを見下ろす仏像の目線は険しく、まるで入ってはいけないところに入ってしまったかのように感じる(ちなみに同仁ではすべての寺院のお堂内は撮影禁止)。
確かにこの世とは違う別世界の中にいるような、そんな感覚がするのだ。
また日本などの仏教とは全く違った習慣があるのも、そのイメージを強くしているのかもしれない。

例えばぐるぐる回すだけでお経を読むのと同じ効果が得られるというマニ車。寺院には大きなマニ車がいくつも並んでいて見るだけで圧倒されそうになるし、小さいポータブルタイプもある。

また峠にはためくタルチョ(五色の旗)や、峠越えのときにチベット人が風に乗せてばらまくルンタ(馬の絵がプリントされた小さな紙)。どちらもお経が載っており、世界中に仏法を広めてくれるという。

ここまでくると神々しいタルチョの海

タルチョの脇でルンタを撒くチベット人。カッコイイ!

私もタルチョを撒いてみたが、全く絵にならない。

そしてあの有名な五体投地。全身全霊を投げ出し、体、言葉、心すべてによって仏法への帰依を示す、仏教において最も丁寧な礼拝といわれる。仏像やお堂の前はよくみられるが、何日もかけて五体投地だけで聖地へ向かう参拝客もいるとか。

五体投地とコルラ(聖なるものの周りを時計回りにまわる巡礼方法)をする参拝客

このような習慣は、チベット以外ではなかなかお目にかかれない。最初は興味本位で見ていても、いつの間にか引き込まれてしまい気づくと何十分も見ていたりする。特に初めて生五体投地を見たときは、感動のあまりその場からずっと動けなかった。一応日本人と同じ仏教徒なのに、ここまで信心深いなんて・・・。
やっぱりチベット仏教には、神秘的で怪しい魅力があるようだ。煩悩まみれの部外者にはその本質が何なのかさっぱりわからないけど、その魅力に気づいただけでも幸せなのかもしれない。

<シルクロード・ベストハイライト!敦煌とトルファン>
シルクロードを旅するうえで外せない2大都市、敦煌とトルファン。もともと国内外から多くの旅行者が訪れる観光都市だったけど、すでに書いたようにシルクロード新幹線開通によってますます便利になった。

まずは古くからシルクロードの要衝として栄えたオアシス都市、敦煌。その立地ゆえ、さまざまな王朝に支配され、何度も興亡の歴史を経験してきたが、いつの時代もシルクロード文化の中心都市として繁栄してきた。その集大成が中国三大石窟の一つ、莫高窟。

2014年から大きく変わった莫高窟。訪問者はまずデジタル展示センターなるところで莫高窟に関する映像を鑑賞し、専用バスで莫高窟で向かうことになった。この世界遺産の石窟の魅力を最大限に引き出したいという心意気が見て取れる。

内部は残念ながら撮影禁止だが、4世紀から1000年にわたりつくられ続けたという壁画や仏像はすばらしいの一言。イスラム勢力や列強諸国によって一部破壊、盗難されたものの、ここまで当時の姿が残っているのは奇跡としか言いようがない。

そしてラクダに乗って砂山を行くというザ・シルクロードな体験ができる鳴沙山。高くそびえたつ砂山、その麓には観光客を待ち構えるラクダがうじゃうじゃ。

ラクダで砂山に連れていってもらった後は、自力で登山。足を砂にとられて思い通りに進めずイライラ&ヘトヘトになるけど、砂山とその合間に湧く三日月のような月牙泉の美しい景色にはため息が出るほど。

帰りはそりでらくらく下山!

そしてトルファンへ。敦煌からトルファンにやってくると、全く雰囲気が違うことに気づく。アラビア文字の看板、色彩豊かな路上市場、どこまでも広がる田園風景とポプラ並木、エキゾチックな顔立ちをしたウイグル人たち・・・。
ここも古くからさまざまな民族が行き交い、栄えた都市。その繁栄を現代に伝える遺跡は、やはりここへ来たなら見逃せない。

あの三蔵法師も滞在したといわれる高昌故城

唐代のミイラが残るアスターナ古墳群

莫高窟と同じく貴重な仏像や壁画が残るベゼクリク千仏洞

高昌古城と同じ時代に栄えた交河故城

けれどトルファンの一番の魅力は、先ほど書いた「中国であって中国でない景色」が存分に味わえる、なんでもない田舎の風景だと思う。特に高昌故城やアスターナ古墳群周辺の風景は、まさに砂漠に浮かぶ豊かなオアシスそのもの。時間がゆっくり流れているようで、「シルクロードにやって来たぞ!」という実感がひしひしと湧いてくる。

一面のメロン畑。ここで食べるメロンは値段格安、味は格別!

西遊記の舞台になった火焔山

ウイグル人民家を訪問。昼寝にピッタリの寝台があるし、やっぱりここは時間の流れ方が違う。

祈りの地チベット・アムド地域へ、そして悠久のシルクロードへ。はるか昔から人々を魅了しながら気軽には近づけなかったこの中国辺境地域へ、今新幹線で簡単に旅できるという幸せ。私自身何度も訪れている大好きな場所だが、新幹線という新しいルートができたことでまた違った魅力に気づくこともできた。心打たれるチベット人の祈りの姿に、何百年も変わらないようなシルクロードの豊かなオアシスの風景。やっぱり何度行ってもまた行きたくなるなあ。

【スタッフおススメ度】

●シルクロード新幹線 ★★★★★
辺境の地についに開通した新幹線。車窓の眺めも抜群で、単なる移動手段としてではなく観光地のひとつとして楽しみたい!

●同仁 ★★★★★
気軽に行けるチベット文化圏だが、寺院では荘厳で重々しい、ありのままのチベット仏教の雰囲気が味わえる。仏教美術はチベットで最も盛んといわれ、特にタンカは見ごたえあり。

●敦煌 ★★★★
中国三大石窟の一つ、莫高窟は評判通りのすばらしさ。鮮やかな壁画や仏像に感動したあとはラクダに乗って鳴沙山の絶景を楽しもう!

●トルファン ★★★★★
完全に中東や中央アジアの雰囲気で、中国のつもりで訪れると驚くこと間違いなし。田舎に行けば古代シルクロードさながらののんびりした空気が流れる。

(2015年10月 伊藤卓巳)

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