不思議なムード漂う街で出会った祈祷師と奇跡の教会・サルバドール

世界遺産サルバドールの旧市街

アフロ・ブラジリアン文化が開花した世界遺産の街・サルバドール

ブラジル北東部、バイア州の州都サルバドールは、コロニアル様式で知られるブラジル屈指の美しい都市だ。「1年の日数と同じ数だけ教会がある」と言われるように、世界遺産の「サルバドール・デ・バイア歴史地区」にはあちこちに華麗なバロック様式の教会があり、パステルカラーのきれいな家々が建ち並んでいる。さらに海辺の町とあって、ビーチのホテルでは、リゾート気分も味わえるのだ。
町にはアフリカ系の住民が多く、民族衣装の白いドレスに身を包んだ黒人女性がレストランで働く姿も見かける。かつて、サトウキビ農園で働く奴隷として連れてこられたアフリカ系の子孫である彼らは、独特の宗教や音楽、舞踊を生み出し、この地にアフロ・ブラジリアン文化が花開いた。夜な夜な舞台で披露される舞踊のような格闘技カポエイラや、ポルトガルの植民地時代に生まれた黒人密教であるカンドンブレの存在など、この町にはどことなく不思議なムードが漂う。
私がこの町へ夫とふたりで訪れたのは1995年12月、ちょうど大晦日であった。陽気で親切な若いガイドの女性と仲良くなり、観光の後で、彼女の叔母さんのお宅を訪問することになった。叔母さんは祈祷師をしているという。ちょうど我々が新しい旅行会社を立ち上げたところだったので、商売が繁盛するように祈祷をしてもらうことになった。不思議な粉を振りかけてお祈りをした後、お守りを渡され、それを会社の扉に貼り付けるように言われた。

奇跡の教会・ボンフィン教会

確かに奇跡を起こした“奇跡の教会”

「明日は新年だから、ボンフィン教会に初詣に行くといいよ」叔母さんに言われるままに、翌朝、私たちは郊外の海辺に立つその教会へ初詣に出かけた。ここは「奇跡の教会」として知られる霊験あらたかな教会で、世界中の信者が祈りを捧げにやってくる。ここで売られているカラフルなリボンを、ミサンガのように手首に結び付けて願をかけるのだ。 荘厳な教会の奥の一室には、願いがかなった人々の写真がたくさん壁に貼られ、蝋づくりの手や足が所狭しと飾られていて、ギョッとする。これらの手や足は、病気が完治したお礼に人々が奉納したものだ。いかにたくさんの「奇跡」が起こったかを証明しているように思えた。
私も教会の名前が書かれたきれいな緑色のリボンを手首に巻いて、ある願をかけた。その願いは誰にもしゃべってはいけないし、願いが叶うまでリボンは外さないように、と言われる。
帰国後3か月あまりたったある日、私はからだに変調を覚え病院へ行った。 それから11年後の2007年、私たちは10歳になった娘を連れて、サルバドールをひさしぶりに訪れた。念願の「お礼参り」をするためである。
あの時、私がボンフィン教会で密かに祈ったのは、「子供ができますように」だったのだ。結婚して10年、子供ができなかった私にも本当に奇跡が起こり、我が娘が誕生したのはボンフィン教会を訪れた年の11月のことだった。
ちなみに、祈祷師のおばさんにもらったお守りは、歳月と共にすっかり色褪せてしまったが、いまだに会社の玄関扉の裏側に張り付いたまま健在である。