山奥にひっそり佇むブルガリア正教の修道院(ブルガリア・リラの僧院)

荘厳な雰囲気漂う馬車

リラの僧院

ビザンチン文化の至宝-その圧倒的な存在感

この圧倒的な、凛とした存在感はなんだろうか?ドーム状の屋根と白黒の横縞の特徴的な装飾。雪をかぶる山並みに包まれるようにしてひっそりと佇んでいる壮麗な修道院。最初にこの姿を見たときは、鳥肌が立つほどの感動を覚えたのだった。
ブルガリアの首都ソフィアから、南へ約120㎞。曲がりくねった山道を走ること2時間あまり。あたりの風景はかなり緑深いものになってきた。標高1147m、「水の山」と呼ばれるリラ山の、清らかな川が流れる自然美に溢れた車窓風景が続く。人里離れた山奥に入り込んできたと思ったら、突如として目の前に現れたのがリラの僧院であった。そして、初対面から私はこの鮮烈な姿に魅了されてしまった。
総面積8800ヘクタールの敷地に立つ、ブルガリア正教の総本山であるリラの僧院は、これほど辺鄙な場所にあっても、長い間宗教や文化の中心であり、ブルガリア人の誇りであり続けてきた。ビザンチン文化の至宝として、1983年に世界遺産に登録されたのであった。

修道士の衣装を着て記念撮影

激動の時代をくぐりぬけて来た奇跡の僧院

その歴史は10世紀まで遡る。修道士イワン・リルスキーがこの地に小さな寺院を建立したのが始まりだといわれている。14世紀に起きた大地震で崩壊し、その後強固な建物が再建された。当時は360人あまりの僧侶がここに暮らし、祈りを捧げていた。華やかな僧院文化の幕開けであった。
後、15世紀になって、ブルガリアはオスマントルコの支配下となった。ところが、なんとここだけは例外的にブルガリア正教を守り続けることができたのだという。その後、共産主義の時代には博物館として使用された。1833年の大火事では、大部分が燃えてしまったが、修復されて今の姿となったのである。まさに、幾多の変遷と激動の時代をくぐりぬけて来た奇跡の僧院といえるだろう。

僧院内部のフレスコ画

今尚、日々途絶えることがない観光客

中心的な建物である聖母聖堂は、その外部と内部が全部で1200ものフレスコ画で埋め尽くされているのが壮観である。2階部分の回廊を歩いて回ると、さまざまな角度から僧院の姿を堪能することができた。山々に囲まれたその姿は、限りなく神聖で、いくら眺めても飽きることがないほどの魅力を秘めていた。
今ではここに暮らす僧侶の数は5〜6人ほどになってしまったそうだ。だが、この地を訪れる信者や観光客の姿は、日々途絶えることがないのである。