カリブ海に浮かぶ小さな島国を独り占め!(ドミニカ国)

首都ロゾーのマーケット

素朴で自然豊かなもうひとつの“ドミニカ”

カリブ海にはドミニカという名のつくふたつの国がある。普通ドミニカと言われると、「ドミニカ共和国」のほうを思いつくだろう。でももうひとつ、カリブ海に浮かぶ小さな島国「ドミニカ国」というのが存在する。独立国で公用語は英語、首都はロゾーという。ふたつのドミニカはともにコロンブス“発見”したが、スペイン領であったドミニカ共和国と違い、こちらは最初にフランス人が入植し、1805年にイギリスの植民地となった。まったく趣が異なるもうひとつのドミニカへ旅立った。
親指しかない右足・・・これがドミニカ国の島の形だ。大きさは佐渡島くらいのカリブの奥地の島である。国際線のフライトが着くメルビルホール空港は、小さな田舎の駅のようだった。私たちを出迎えてくれたのは、タクシードライバーのピーターソンさんという陽気で優しげな黒人のおじさんだ。

島を案内してくれたドライバーの
ピーターソンさん

カリブのネイチャーアイランド

あぜ道のように細い曲がりくねった道を走り出すと、この国がいかに自然に溢れているかを知ることになった。飛行機が着陸するときも、一面のジャングルと深い山々が間近に迫り、峰にぶつからないかとハラハラするほどだったのだ。ピーターソンさんが「カリブのネイチャーアイランド」とこの島のことよぶように、緑と花々の美しさはピカイチである。彼は運転しながら次から次へと指をさす。あれはマンゴーの木、あれはパパイヤ、パンの木、コーヒー、グレープフルーツ、バナナ、アボカド、パッションフルーツ、シナモン、ガムの木、レモングラス・・・。まるで植物図鑑だ。ときおり車を降りては、木の皮を削ってシナモンの香りをかがせてくれたりする。動植物はたいへん豊かで、鳥類は170種を超え、世界最大の甲虫であるヘラクレスオオカブトなど希少な昆虫も多いという。

4つ星クラスのフォートヤングホテル

見どころは少ないが気軽に楽しめるカジュアルリゾート

この島にはカリブによくあるゴージャスなリゾートホテルはない。ロゾーの町外れの海に面した私たちのホテル「フォートヤング」も、この国では指折りの高級ホテルとされるが、4つ星でカジュアルなムードだ。火山の島なので白砂のビーチはなく黒砂である。
翌日、ピーターソンさんの案内で島巡りにでかけた。カリブといっても、ドミニカ共和国やキューバのように、コロニアルな町並みもほとんどないし、名所旧跡があるわけでもない。先住民族であるカリブ族3500人ほど暮らすエリアが島の北東部にあって、ピーターソンさんの友人に会いに行った。家族で籐の籠や小物入れなどを編んで売っている。カラフルできれいなふた付きの小物入れは、かっちり編んであって品がいいので、ひとつ5ドルでふたつ買った。

世界遺産のエメラルドプール

熱帯雨林の中の美しい天然プールでひと泳ぎ!

世界遺産に登録されている「モーン・トロア・ピトン国立公園」は、標高1300mの山があり、人気のハイキングコースだ。熱帯雨林のなかを分け入っていくと、「エメラルドプール」とよばれる澄み切った天然のプールがあり、滝もあって、映画『ジュラシック・パーク』に出てきそうな情景のなかでひと泳ぎを楽しめる。しかし、不思議なことに公園に入場するチケット売り場には、観光客はおろか係員すらいない。お土産屋らしき屋台が数軒あったが、商品もなく売り子もいないのだ。聞けば、週に1回クルーズ船が来るときだけオープンするらしい。今は大きなクルーズ船が出航していったところなので、観光客の姿を見かけないのもこの国の特徴で、リゾートホテルが少ないのにも納得である。おかげで、この素朴で自然豊かな島を独占した気分であった。

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