ラリベラの岩窟教会群(エチオピア・ラリベラ)

賑わいを見せるローカルマーケット

ディープなエチオピアの旅

巨大な1枚岩を彫り抜いた十字架の形をした教会がある、という話をかねてより聞いていて、その不思議な写真を見たとき、いつかは絶対にこの目で見たいと思っていた。
この教会があるのは東アフリカの国エチオピア北部、ラリベラの町だ。バンコクからはエチオピア航空で首都アジスアベバまで直行便で飛び、そこからは国内線でラリベラへ飛ぶ。アジスアベバ経由でアフリカ各地へのフライトを飛ばしているエチオピア航空の機内は、乗り込むともうそこはアフリカかと思わんばかりのすごい状態だった。大きな黒人の乗客が大きな荷物を通路にまで置いて、私の席に他の人が当たり前のように座っていたり。満員の人いきれと独特の体臭でむせ返りそうであった。ディープなアフリカへの旅の幕開けにふさわしい洗礼だった。

聖ギオルギス教会

12mの正十字架

信じがたい光景

ラリベラにはたくさんの岩窟教会があるが、やはり最高の見ものがこの十字架教会こと「聖ギオルギス教会」である。周りの岩山と十字架の部分が、かつては同じひとつの岩山だったとは信じ難い。奥行きも高さも幅もすべて12mの正十字架形である。外の細い通路を抜けて下に降りると、黄色くこけが生えた石壁には、アクスム様式と呼ばれる均整の取れた美しい窓がある。小さい入り口から中に入ると、内部は柱もない掘り抜きの狭い空間となっている。薄暗くじめじめして、ダニの温床という悪名高き教会内部である。番人の僧侶がただひとり、教会用語のグズ語で書かれた500年も前の古びた聖書を見せてくれた。

洞窟で聖書を読む人

エチオピア正教の聖書

深い信仰のなせる技

エチオピアの北の果て、シバの女王の伝説の地アクスムの都が衰退した後、12世紀にここ北部のロハの地を納めたラリベラ王は、標高2600mのラリベラに11の岩窟教会を次々に建てた。聖地エルサレムがイスラム教徒に占領され、巡礼ができなくなったため、ここを第2のエルサレムにすべく、即位40年の間に2万5千人もの労働力をかけて、のみと槌だけでこれほど見事な建造物をつくりあげたのだから驚きである。
風化して損傷が出るのを防ぐために、屋根や木組みをつけた他の教会群とは異なり、十字架教会だけは美しく保たれているため、屋根などもなくて見栄えもいいのである。

かわいい子供たち

エチオピアはユニークなお国柄

紀元前2世紀にはすでに王制があり、現在に至るまで独立国であり続けたエチオピア。人口7800万のうち55%はエチオピア正教という独特の原始キリスト教を信仰する。40%のイスラム教徒ともうまく共存し、熱心な信者は1年に250日も断食するのだという。公用語は独自の文字を持つアムハラ語で、国中に85の民族と200もの方言があり、1日を12時間制で数えたり、聞けば聞くほどユニークなお国柄である。
ナイル川の源、歴史と信仰の国エチオピアの原点に触れる、旅の醍醐味がここラリベラにはあった。

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