-
ホーム
-
井原三津子の旅コラム
-
トイトレイン 紅茶の里を走るダージリン・ヒマラヤ鉄道(インド)
トイトレイン 紅茶の里を走るダージリン・ヒマラヤ鉄道(インド)
ダージリン・ヒマラヤ鉄道
世界遺産・ダージリン・ヒマラヤ鉄道
ポッポー!!盛大に汽笛を鳴らし、黒い煙を吐きながら列車は走り出した。でも、走るのは道路の片隅の細い線路に沿って、まるで路面電車のように、道路脇の八百屋や民家の軒先すれすれを走り抜けて行く。少し走ってなぜか列車は止まった。客が乗り遅れたのだ。何かあるとすぐ簡単に列車は止まる。出発時間もいい加減だ。
トイトレイン。これは愛称で、その名が表すようにおもちゃみたいな蒸気機関車である。実際、610mmの線路幅、1車両12人位しか乗れない小ささだ。紅茶の名産地ダージリンからニュージャルバイグリまで、全長88km、標高差2000mを走る正式名称ダージリン・ヒマラヤ鉄道である。鉄道としては世界で2番目に1999年、世界遺産に登録された。
高原の茶畑
高地に広がる紅茶畑
インド北東部のダージリンは標高2100m、涼しい高地に紅茶畑が広がり、インド最高峰のカンチェンジュンガを望める展望台も近い、風光明媚な町である。イギリスの植民地時代、ここは避暑地として保養客が訪れた地でもあった。もともとは、1880年、紅茶の積み出しと保養客を山麓から運ぶために開業されたのだ。鉄道王国と呼ばれるほど全土に鉄道が張り巡らされているインドにあって、最も古い登山鉄道で、なおかつ今でも蒸気機関車のファンがわざわざ世界中から乗りに来るほどの人気を誇る。
町中を抜けると、列車は急勾配を上り下りするため、スイッチバックやループ線を経由して、紅茶畑や大自然を眺めながら進む。私は時間がなかったので、グム駅までの9kmを50分かけてゆっくり走る部分乗車を楽しんだ。
オレンジ色が眩しいマリーゴールド
「すす」対策の赤いスカーフとオレンジ色の綺麗な花
しかし、11月下旬とあって、エアコンもなく窓が開け放たれた車内は風が吹きすさび、かなり冷える。写真を撮るために窓を開けている乗客がほとんどだからだ。そこで役に立ったのが1枚の赤い大判のウールのスカーフだった。窓から入ってきて、結構服が汚れてしまう「すす」除けにもなった。これは始発のダージリン駅で、それを見越して車内まで売りに入って来たスカーフ売りのお姉さんから買ったものだ。ここはインドだ。450ルピー(日本円で約1350円)というのを、あれこれやり取りして半額以下の200ルピー(約600円)で買ったものだった。値段交渉もここでは楽しいものだ。
ループ状に走るスポットで列車は10分停車した。この季節に咲き誇るマリゴールドのオレンジ色の花々を前にして、トイトレインの青いボディが美しい姿を見せていた。