市場は原色 チチカステナンゴ(グァテマラ)

行くなら木、日曜日

毎週木曜と日曜、ここチチカステナンゴの町の人口は、普段の1,000人余りがその20倍にも膨れ上がる。それは市場が開かれるため、周辺の村々からたくさんのインディヘナが集まってくるからだ。インディヘナとはマヤ系の末裔の民のことである。色鮮やかな民族衣装に身を包んだインディヘナがトウモロコシや豆をはじめとする生鮮食料品や日用品、そして民芸品などを持ち寄って売るわけだ。
グァテマラでナンバーワンといわれる市場がこの町の中心、セント・トーマス教会の前で開かれると聞いてやって来た。標高2,071メートル。メキシコの南に位置するグァテマラにあっても、チチカステナンゴの冬の日、朝夕はブルブルふるえるほど寒い。そのかわり雨が降らないシーズンの今、天気のいい昼間は絶好の観光日和だ。
青空に映える白い教会の石段下はまさに色の洪水である。幾何学模様にバラなどの花柄の艶(あで)やかなウイピル(ブラウス)に縦じまのコルテ(巻きスカート)、それにシンタ(帯)を締めて頭にも布を巻く女性たち。村によってその色柄は微妙に異なるとはいえ、集団で見る色彩はこれぞ「インディヘナの世界」。もっともグァテマラらしい風景が見る者を圧倒する。

手織り財布が90円

独得の土着宗教儀式

「エラードス・チョコ、バニーラ!」
アイスクリーム売りのおやじが駅弁みたいな箱を首に掛けて、やたらドスの利いた大声を張り上げて客寄せしている。
インディヘナたちが荷を広げ、花々や色とりどりのろうそくが散乱する石段を登っていくと、何やら煙が目に滲(し)みてノドまで痛い。見ると教会の入り口で空き缶に香を焚(た)いてぐるぐる振り回し、煙をもうもうとまき散らしている男がいる。その横では熱心に祈りをささげる妻の姿があった。香の煙がむしろ寺を連想させ、これがカトリックの祈りとは信じ難い。
実は見た目はカトリックの教会だが、この辺りに昔から暮らすマヤ・キチェー族の土着宗教と融合し、独得の儀式が行われているのだ。写真撮影禁止の教会内部に足を踏み入れる。器自体はヨーロッパの教会そのものなのだが流れる空気は異質で、まるで美しいワイングラスに焼酎(しょうちゅう)を注いだような混とんとしたものであった。

インディヘナの土産物屋をひやかすのも、チチカステナンゴでの大きな楽しみである。細い路地を挟んで両側に軒を連ねる店の数はかなりのものだ。
「アミーゴ(友達)、中へ入って見てってよ!」
さかんに掛けられる呼び声につられて店内をのぞくと、インディヘナの民芸品である織物の小物が山積みだ。財布にポシェット、メガネケースなどありとあらゆる小物の豊富な品ぞろえと品数の多さに驚かされる。敷物にいい布地やベスト、ポンチョにワンピースといった衣類も所狭しと並ぶ。なにしろかわいい手織りの財布が1個5ケッツェル(約90円)だからお土産さがしにも困らない。
こっちの店で5個、柄がちょっと違うからこっちも捨てがたいと、隣の店でまた5個。気がつくと、商売ができるほど買い込んでしまった私であった。