さらに奥地を目指す旅へ(ナミビア)

誇り高いヒンバ族

ヒンバ族は誇り高く、心優しい、そして何といってもカッコいい民族である。
女性は全身赤茶色、上半身裸で、垂れ下がるほどたわわな乳房は乳牛を想わせる。たいてい赤ん坊を抱いているか小さな子供の手を引いている。突き出したお尻にはひらひらした皮布を付けてまるでダチョウのようで、姿勢よく颯爽としている。人に媚びる事がないのか、にこりともしないので、最初は少し怖い印象を受ける。
男性は全身もっとこげ茶色で、たとえば上から革のジャケットを羽織っている人を見かけたが、それも同じこげ茶色なのだ。頭から間違ってペンキをかぶってしまったとしか思えないほど、完璧に頭の先から爪先までこげ茶色。そして皆、何があってもどこ吹く風といった感じで飄々としている。うーん、やっぱり何とも言えずおしゃれ。
全身に塗りたくっているのは、天然の色粉をバターやワセリンで溶いたものらしい。竹の筒状の容器に入れて持ち歩いているが、匂いを嗅がせてもらうとアロマチックないい香りがして驚いた。国境を越えて、内戦をしている最中のアンゴラまで買いに行くと言うから、かなり思い入れが強いのだろう。
女性はしっかり赤茶色でないと美しいとみなされないからなおの事だ。そして首輪に手足の銅製アクセサリーも欠かさない。かなり派手なデザインだ。髪飾りと首輪で未婚か既婚かがわかるらしい。男の子の髪型は、まるで牛の尻尾のようにピョコンと後ろに跳ねている。ヒンバ族にとって牛は宝物だかららしい。ひとりひとり、出会うほどに興味が沸いてきた。

「ロストワールド」目指しセスナチャーター

そんなヒンバ族に出会うのを最大の目的に私はナミビアへの2度目の旅に出た。前回7年前、オーソドックスなスワコプムント周辺だけの旅だったので、今回はもっともっと奥地を目指したのである。まず、北部のダマラランドで砂漠の象を見て、カオコランドでヒンバ族に出会い、それから一路南へ、世界で最高の高さを誇る砂丘が見られる南部の砂漠ソッサスフレイへ足を延ばした。
ナミビアの最北端、アンゴラとの国境のエリアに位置するエプーパ・フォールズ。2国の国境となっているエプーパの滝周辺は、まさに最後の秘境、「ロスト・ワールド(失われた世界)」であった。ここに行くにはセスナ機をチャーターしなくてはならない。陸路ではかなりの悪路のためほとんど行きつくのは不可能なのだ。スワコプムントからチャーターし、北部ナミビアの見所を周遊する専用セスナと専用パイロット,そしてガイド付きの贅沢な旅となった。
ガイドはフランス人のキャロリーヌさん。茶系の金髪を肩までおかっぱに切り揃えた、フランス人らしい黒くてしっかりした眉の美人だ。パリ出身、ガイド歴5年、年齢は不詳。かなりしっかりしているので、28歳くらいかな?聞き取りやすい英語を話す。
パイロットのロベルト氏は南アフリカ出身の若きエリート風。現地語(アフリカーンス)訛りの早口の英語は本当に聞き取りにくいのでちょっと困った。でも、操縦技術は大したもので、眼下に滑走路を見つけるや上手に機体をカーブさせ、着陸するのも楽々。乗用車をうまくパーキングするノリでやってしまうのがエライ!
高度1,200メートル、荒涼たる砂漠と海と、最後は山がちの地形が続く。まずはダマラランドまで、所要1時間20分のフライトだ。前回、ウォルビスベイ上空で見たフラミンゴの群れの飛び立つ感動的な光景が忘れられず、今回も見たいと海岸上空では目をさらのようにしていたが、あいにくここら辺にはいないそうだ。帰路にスケルトンコーストを通って見ましょうとロベルト氏。スケルトンコーストはナミビア北西部の海岸線のことで、フラミンゴの大群がいることで知られているのだ。期待に胸が膨らんでくる。
ダマラランドの小さな小さなエアスリップ(滑走路)に無事着陸すると、ロッジのオープンサファリカーが出迎えに来ていた。10分も走ればロッジに到着した。

砂漠の象に遭いたくて

「パームワッグロッジ」は、ダマラランド地方北西部ユニアブ川の近くに位置し、まわりは砂漠の象をはじめ、運がよければライオンやサイ,ヒョウにバブーン(マントヒヒ)まで見えることもある動物保護区内にある。国立公園ではないけれど、たとえば象は840頭いる・・・という風に明確でよく保護されている。
ホテルの敷地内に背の高いヤシの木が立っているからロッジの名前が付いたようだ。ロッジはわらぶき屋根の1件ずつ独立したタイプで、ナチュラルかつシンプルである。
石造りの床や屋根を支える柱に自然の木をそのまま使っていたりして、とても和める。
自分のバンガローに荷物をおろし、 ほっとひと休み・・・の瞬間だった。 「エレファント!!」
ガイドのキャロリーヌさんの呼ぶ声がした。大声を出すと象が逃げてしまうのでそっと近づいて行く。ちょうどロッジの敷地のすぐ外の木のところに1頭、これこそ本物の砂漠の象である。こんなにロッジの近くまで象が遊びに来るとは驚きだが、他のゲストいわく、夕べは12頭の象が集団で遊びに来ていたそうだ。
レンガ造りの柵の下のボードにこんなWARNING(警告)が書かれている。
「象はロッジの敷地内やキャンピングエリアに自由に近づいて来る事もあります。象の進行を妨げたり象にむやみに近付いたりしないで下さい」
プールサイドバーでステーキー&チップス、とヴュルスト(ドイツ風ソーセージ)で腹ごしらえを。ナミビアはドイツの植民地だったためドイツ料理が本格的で美味しいのだ。ひと休みして、午後3時半、オープンサファリカーでロッジを出発。午後のゲームドライブの始まりだ。4WDの座席は、はしごで上る高さでちょうど見晴らしがいい。ロッジのゲートを出ると一面の荒涼たる風景の中をひた走り、ブッシュの陰にクドゥー発見。耳が丸くて大きい可愛い鹿のような動物だ。まだ若いオスでこれから角が生えてくるそう。キリンが少し遠くに1頭、茶色いマウンテンゼブラ(シマウマ),オリックス、スプリングボック・・・・。でも残念ながらライオンとかヒョウとかハイエナとかは現れず、サファリとしては不完全燃焼だ。
最初は暑くてTシャツだったのに、日がかげりはじめるとかなり冷えてきた。オープンカーなので風が強いのだ。上からどんどん着込んでいく。夕景のサバンナ。あたりの風景はとびきりすばらしい。黄色いそう現に緑のブッシュ、そして背景をなす山々の美しい稜線。動物は少なくてもこれだけで十分幸せな気分に浸れるサファリドライブであった。
ロッジのレストランでのディナーは7時から。ちょうど夕陽の頃、ゲストたちは皆バーの外で夕陽を眺めつつ1杯やっている。真っ赤な太陽が大きすぎるほどで、地平線に沈む姿はまさにサバンナの日没!すごく感動的な色だ。日本では絶対に見られない色である。
ディナーはコースメニュー。濃厚でいい味のマッシュルームクリームスープ、メインディッシュにチョイスしたチキンのインドネシアスタイルもカリカリ香ばしくスパイシーでなかなか美味しい。ちゃんと冷えた美味しいビールがあるのもやはりドイツのコロニーだっただけのことはあり、ワインも大好きな南ア産のものがあるし、こんな辺境の地とは思えぬレベルの高さである。デザートのフルーツサラダwithアイスクリームも満足できるものだった。ナミビアという国を誤解している人が多いかもしれないが、はっきり言ってケニアやタンザニアより食事のレベルは格段に高いのである。
夜、ロッジに戻り、四方八方に飛び散るちょっと不便なシャワーを浴びた後、ベッドの白い蚊帳の中で本を読んでいた。北部ナミビアは一応マラリアに注意した方が良いので、寝る時は蚊帳の中だ。10時、電灯のひとつが消えた。もうすぐ停電になるという知らせだ。案の定10時半完全に消灯。持ってきた懐中電灯がなければ本当の真っ暗闇になるところだった。明日も早いので早く寝ることにする。

天然素材100%のテントロッジに泊まる

ダマラランドからまた同じセスナとメンバーで一路カオコランドのエプーパフォールズへ1時間15分のフライトだ。海岸沿いのスケルトンコーストを通ればフラミンゴの群れに出会えるかもしれないが、ルートは直線と決められていたので、帰路に期待することにして、とりあえずナミビア最北端の地を目指した。
またもや100点満点の着陸を終えると、エプーパフォールズのエアスリップに降り立った。いきなりヒンバ族のファミリーがいるではないか!なぜ?観光ヒンバ族のお出迎え?
少し俗化しているのかという想像はいい意味で裏切られた。ヒンバ族の奥さんが耳を悪くしたとかで、キャンプのマネージャーに薬をもらうために来ていたらしい。全身こげ茶色、髪の毛ごわごわで、すごい人々にいきなり出会ってしまった。
「エプーパ・キャンプ」のランドローバーの出迎えを受け15分あまり。少し高台の上から見下ろす風景が、突然砂色の世界から瑞々しいオアシスの緑に変わった。クネネリバーと言う川が流れ、その両岸は林立するナツメヤシの木々の鮮やかな緑が織り成す、まるで一大パラダイスのようだ。1キロ先では轟音を立てて流れ落ちるエプーパの滝。

川の周りにいくつかあるキャンプの中でいちばん設備が整っているのが今夜の宿「エプーパ・キャンプ」である。他のキャンプは自分でテントを持参してくるスタイルだが、唯一ここだけはちゃんとしたテントロッジが用意されている。何しろ、水洗トイレに湯沸しがあってホットシャワーが浴びられるのだから大したものだ。ベッドカバーのセンスもいいし、レンガ作りの壁に囲まれたセミオープンスタイルのシャワールームには、自然の木を使ったタオル掛けがいい感じ。
川のせせらぎと鳥のさえずり、そしてキャンプの近くに暮らすヒンバ族たちの飼うニワトリやヤギの鳴き声に包まれたキャンプサイトは、すべてが自然の素材で作られたオープンスタイルのレストランにも川から心地よい微風が吹き抜ける。
ビーチと呼ばれるレストラン下の砂地は川を見下ろすスペースに木の椅子が並べられ、まずキャンプに到着した時に好きな飲み物で歓迎されくつろぎ、空いた時間に本を読んでくつろぎ、そしてディナーの前のひとときをここで過ごす、いわばオープンスペースのラウンジである。片隅に「STAY ON THE BEACH(川に入らないで下さい)」という注意書きが。なぜ川に入ってはいけないんだろう?と思って聞くと、キャロリーヌさんが手招きする。ビーチに備え付けられている高性能の望遠鏡を言われるままに覗いてみると、なんとそこには大きな口を開けて岩の上にいる大ワニの姿があった。

桃源郷で体験、ヒンバ族乗合タクシー

キャンプからヒンバ族の村へはランドローバーで20分あまりだ。運転しつつ案内してくれるのは、キャンプの世話係アレックスさん。彼女はドイツから来ている大学生だが、あまりにもしっかりしているのでマネージャーの奥さんかと思っていたくらいだ。あらゆるアレンジをそつなくこなし、何でもよく知っている上、ヒンバ族の言葉を結構話せてコミュニケーションを取れるのだからすごい。3ツ星のエプーパキャンプがホスピタリティの面では4ツ星に引けを取らないのも、彼女の存在によるところが大きい。
朝、キャンプを出て少し走ると、途中でヒンバ族のおばあさん、お姉さん、お兄さん子供・・・と順に車に便乗させてあげるのだ。村へ行く人々にとってはまさに乗りあいタクシーである。身体に塗ってある茶色いのがシートにつかないようにあらかじめ布を敷いてから乗せてあげるアレックスは手馴れたもの。「モロモロ(こんにちは)」「タリウィ(お元気?)」と陽気に言葉を交わす彼女。簡単なので真似して声を掛けてみた。皆、ニコニコして挨拶してくれる、とてもフレンドリーな人々だ。
村に近づくと、男の人が意味のわからない言葉で不思議な歌を歌い始めた。すごく楽しそうで、自然な歌声。思えば私は旅人である。そしてヒンバ族も、遊牧民でありそのほとんどが移住型の暮らしをするいわば旅人。1台の車にたまたま乗り合わせたヒンバ族の人々がやけに身近に感じた。桃源郷のような風景の中に溶け込んでいくその歌声は、私の心の中にも不思議なほど沁みて来て、とても幸せな気分に浸っていたのである。
着いたところは、ヒンバ族の仮居住型(テンポラリー)の村。定住型のヒンバ族もいるらしいが、ここの人々はちがう。見渡す限りの草原に7つほどの村が点在している。大家族で暮らさず、家族単位というのが特徴だ。
内部は木製、外は土をこねて塗ったシンプルな倉型の家に彼らは暮らしている。防水性に優れているようで、穀物用の倉など高床式でヤギが届かない高さにしてある。村に入るとき、家主の許可を得るため、アレックスが持参して来たプレゼントのマイス(トウモロコシの一種)の粉を袋に一杯とコンソメスープの素を渡すと、小さな子供が頭に載せて運んで行った。主食はマイスの粉をヤギのミルクで練ったオートミールのようなもの、時々ヤギの肉も食べるらしい。
行きの飛行機で娘がもらっていたおもちゃの飛行機や文房具セットの入った可愛いかばんをヒンバ族の子供たちのプレゼントに持ってきていた。おとうさんに渡すと、握手までして大喜びしてくれたのであった。
この村には髪型や飾りのデザインが異なる女性がなぜかひとりいた。聞くとアンゴラからやって来て一緒に暮らしているゼンバ族の女性だそう。ゼンバ族とは土地の言葉で「忘れられた人々」と言う意味で、「ロストワールド」の「ロストピープル」みたいで、なんだか象徴的な気がした。もともとはアンゴラから来ているそうだ。ヒンバ族とは一緒に暮らすものの、お互い結婚などはできないらしい。寂しい同居人、というところか・・・・
次にヒンバ族のお墓というのを見学させてもらった。土葬だが、1940年以前は座った形で埋めていたそうだが、それ以降は横に寝た形で土葬し始めたので、大きな墓となった。とはいえ、石を積み上げてあるだけのシンプルなものが一般的だ。お金持ちの墓だけはコンクリートの墓石と、それを取り囲むように木のような棒が地面に突き刺さり、それに牛の角や骨、壺などを飾ってある。棒のようなものは、生前、故人が愛用した牛笛として使っていたオリックスの角。牛はあくまでも彼らの貴重な財産であり、牛の角の多さは富を表すのだ。とてもわかりやすいが、とてもユニークだ。

SUNDOWNER(夕陽)の刻、エプーパの滝を眺めに丘へ登る

エプーパキャンプでのプログラムの中で、ハイライトと言えば、それはエプーパの滝を見に行くSUNDOWNER TOUR。ディナーの前のアペリティフは丘の上で、という趣向だ。それも、とっておきの眺めというおまけ付き。丘の上からはエプーパの滝をはじめ、10以上の細長い滝がナツメヤシの緑のオアシスのあちこちで白くて美しい姿を見せている。彼方に壮麗な山並み、その向こうはアンゴラである。川が国境をなしているのだ。谷の向こうに手付かずのバオバブの木がニョキニョキと生えているのが見える。ヒンバ族の人々はこのバオバブの木の実を好んで食べるそうだ。
「失われた楽園」の風景を目の当たりにしつつ、アレックスたちキャンプのスタッフが用意してくれたアペリティフで乾杯。
さまざまな飲み物がテーブルの上の白いテーブルクロスにおつまみと一緒に並べられている。もちろんよく冷えた白ワインは美しいワイングラスに入れてくれる。楽しそうな人々の顔が、夕陽に輝いてオレンジ色に染まってくる。きっと自分の顔も最高に幸せそうに輝いているはずだった。
キャンプに戻ってのディナーは、オードブルにビーフのスパイシーなカルパッチョ風。少しローストしてありパルメザンチーズがかかっていて、なかなかいける。メインディッシュはチキンブレスト。胸肉のロースト。温野菜のグラタンの付け合わせもGOOD。ワインもふんだんに注いでくれる。庭のオープンスペースの長テーブルでドイツの老夫婦とキャロリーヌさんとアレックス、ロベルトなどとおしゃべりを楽しみながら、夜は更けていくのだった。
翌朝キャンプを出発である。朝、ミニパンケーキとシリアルの朝食を同じオープンテーブルで楽しむ。パンケーキにかける蜂蜜は本当にナチュラルで美味しくて、やっぱりたくさんのハチがそれを目指してどこからともなく集まって来るのだった。アレックスはやはり慣れたもので、蜂蜜の入れ物にお皿でうまい具合にふたをしてくれた。
すべてが心地よく、幸せな時ほど早く過ぎるもの。立ち去りがたい思いでキャンプを後にして、次なる目的地、南部のナミブ砂漠をめざすのであった。

一路、南へ、南へ

帰り道は約束通り、スケルトンコースト上空をロベルトさんは飛んでくれた。白く波立つ海岸に迫る荒野。砂漠のデューンまでは見えないが、低空飛行で味わうコーストラインは、セスナのダダダダ・・・・という音と相まってとてもワイルド。ここにコロニアルピンクのフラミンゴの大群が驚いて飛び立ち赤い羽根を見せつつ広がっていく・・・という図があれば、本当に鳥肌モノなのだが・・・あいにく今回はフラミンゴはどこかへ行ってしまったようで、1羽たりとも姿を見せてはくれなかった。
所要2時間、ダマラランドのエアスリップに一度着陸して給油し(これもロベルトさんが自分でやるのだ、機体の拭き掃除までこまめにやるものだから、彼はキャロリーヌとアレックスに、将来いいダンナさんになるよ、などと冷やかされていた)そこから1時間で、スワコプムント空港着。なんと、着陸時にタイヤのひとつがパンクした。でもどうってことはなかったが、滑走路の真ん中でセスナは動けなくなってしまい、車が迎えに来てくれたのだった。最後の最後にパンクするなんて。もう、ここからナミブ砂漠へは車で向かうのであった。お世話になったセスナとロベルトさんには、そこであわただしくお別れをした。
スワコプムントに1泊後、よく朝8時ホテル出発。ミニバンをたくましく運転してくれるキャロリーヌさんとの旅が再開した。一路南へ南へ。年中霧がかかったように曇って肌寒いスワコプムントの町を抜けて3時間も走ると、大自然のまっただなかに自分がいることに私は気付いた。一面に広がる荒原におもしろい形の木が生えている。コッカーブームと呼ばれるアロエの木だ。乾燥し切った太い幹の皮はめくれ、上の方に可愛いアロエの葉が生えている。ブッシュマンが弓矢を作る木だそうだ。ナミビアには多種のアロエが存在するようで、1冊の図鑑があるほど、その種類は多い。
ユニークな木の前でひとしきり記念撮影を済ませると、ランチを食べるため「ロストリック・リッツ・ロッジ」に向かう。ホテルの洞窟風レストランはインテリアも雰囲気も素敵だが、肝心の料理の方も味・料共に大満足なものだった。オードブル・サラダ・ステーキ・デザート。満腹になった後のお約束は車の中での心地よいお昼寝である。運転し続けるキャロリーヌさんは寝る事も出来ず大変だろうと聞くと、慣れているし、運転が好きだし、との頼もしい答。タフな女性である。2時間半ほど走ると、ようやくソッサスフレイに到着した。
純然たる砂漠というより土漠というような自然の広がる風景の中に、時おり姿を見せるダチョウの群れやバブーン(マントヒヒ)たち。これぞ、ハイダウェイの極地とでも言えそうな辺境の地に、ぽつんと佇むロッジ、それが今夜の宿「ソッサスフレイ・ワイルダネスキャンプ」であった。
ナミブ砂漠の広がるナミビア西部一帯を占めるナミブ・ナウクラフト公園は、南アのクルーガーに次いでアフリカで2番目に大きいことで知られでいる。世界最高の標高を誇る迫力あるデューン(砂丘)が見られ、そこに登ることも出来るのが、ここナミブ砂漠だ。
そんな砂漠の片隅にあって、ワイルダネス・ロッジの回りのブッシュにはオリックスやスプリングボック、ダチョウなどが走りまわっている。平原を見下ろす山の上に9つだけのバンガローがちょうどよい間隔で並ぶ。
ユニークなロケーションはもとより、すべてがナチュラル素材で作られたバンガローのセンスのよさに脱帽である。レンガや岩、木とかやぶき屋根。ゆったりと広いコテージは大きなガラス張りでワイドなパノラマがとても嬉しい。きれいな白い蚊帳のついたベッドのリネン類の色柄のおしゃれなこと!洗面所のモスグリーンの陶製のシンクに、動物をモチーフにしたレリーフの付いた真鍮の縁の付いた鏡。プチプレゼントみたいにリボンが掛けられた石鹸やわら紐で結ばれた紺色のタオル。コロニアル風の赤い木を基調にしたシャワールームも、バスタブこそないが、たっぷりのお湯が出る気持ちいいシャワーで、眺めが最高のシャワータイムが過ごせる。セミオープンのプライベートプールが付いていて、岩に囲まれちょっと専用露天風呂風。水が冷たくて入れなかったのが残念。これが熱いお湯なら展望風呂そのものだったのに・・・砂漠の近くだから、何が出ても不思議じゃないとは覚悟していたが、予想通りクローゼットに2匹の中くらいのクモがいたのもご愛嬌か。
ロッジのディナーはゲストもスタッフも全員が一緒の「ファミリーテーブル」で取るスタイル。小さなロッジならではの、皆さん仲良く楽しんでくださいという趣向だ。シェフの前口上も大袈裟なほどで、種類の少ないビュッフェの中のメインのローストラムレッグはクセがあり、ラムとは思えず、最後に出たデザートのチョコムースは量ばかり特大で甘すぎて閉口した。かなり高級なロッジだが、食事だけは?で、あたりはずれがあるものだ。

世界一高い砂漠に登りたい!

4時45分起床。今日は早起きしていよいよ砂漠に向かうのだ。モーニングコーヒーを飲んだ後、6時、チェックアウトを済ませサファリカーでツアーに出発。そのまま、今夜はロッジを変わるのだ。オンシーズンの今、いつも満室状態のホテルだから、1泊しか取れず、もう1泊は「ソッサスフレイロッジ」に泊まる予定である。
今朝はドアと窓のあるジープなので寒さもマシで一安心。同行者は南アのダーバンからこのホテルに3泊するだけのために来ているという一人旅の女性イヴォンヌさん。ひたすらのんびりしたいので、この何もないロッジを選んだのだそうだ。今日1日だけツアーに参加したら、後はのんびりしたいので、「Leave me alone(放っておいてください)」とスタッフにジョークを言っていた。
車は西の砂漠、ソッサスフレイを目指し走っていく。行く手の空がピンク色に染まり始めたので、振り返るとちょうど背後から真っ赤なお日様が上ってきた。珍しい木々や鳥、時おり現れるスプリングボックなどを眺めながら1時間半ほどで砂漠へと入って行った。
デューンはナンバーが付けられ管理されているらしいが、デューン45はもっとも有名な、高さのあるデューンである。形も美しく、ちょうど淵をたどるように上に登って行くと、そこからの景色がすばらしいのだ。
両側が急斜面で、滑り落ちそうな気がして結構スリルがある。120メートルまで登るとけっこう疲れた。もうひとつの頂上まで登ると140メートルらしいが、まあこの辺で十分だろう。あたりの風景、デューンの赤い色はちょうどオーストラリアのエアーズロックのようだ。砂漠が岩なら・・・・
たくさん歩いて歩いて、歩き回った後の砂漠の朝食タイムは極上のひとときであった。アカシアの木陰でテーブルとイスをセッティングしてくれ、テーブルにはクロスが掛けられる。ドーナッツ、マフィン、食パンにバター、サラミ、チーズなど。インスタントコーヒーだが、自然の中の食事は何よりもおいしいのだ。
アカシアの木の根元に、たくさんの穴が空いている。見ると、小さくて可愛いデザートマウスがチョコチョコ走り回り、可愛い小鳥も飛び交っている。町のネズミと大違い!砂漠のネズミはリスのように可愛かったのである。
デスフレイというエリアに行くと、世界最高峰の砂丘「クレイジーデューン」が見えた。なんと標高320メートルもあり、傾斜は32度、こんな砂丘に登る奴は皆クレージーだから、この名が付いたそうだ。納得。クレージーデューンはまたの名をビッグパパといい、反対側にある優しげなカーブを描く砂丘をビッグママと呼ぶそうだ。遠くからクレイジーデューンの頂上あたりから滑り落ちようとしている人影が見える。すごい。

デューンの見える眺めのいいロッジで

50軒くらいのロッジが点在する規模の大きめのホテル「ソッサスフレイロッジ」は、居ながらにして岩山と砂丘が一望できるステキなロッジだ。ナミビア最後の夜を飾るにふさわしい。オープンで明るい感覚の敷地にはプールもあり、さまざまなサボテンやコッカーブームが生え、デザートマウスや長い足のユニークな(上品な!)鳥がテケテケと走り回っている。とっても楽しいホテルなのである。
ロッジはシンプルながら、快適で、テントの窓から見える風景は絵のようにすばらしい。ファスナーで開閉する窓、扉、そしてレンが造りといった取り合わせが特徴的だ。ホットシャワーは出るし、エアコンはなく扇風機だけだが、部屋には蚊もいなくて、居心地はいい。
パブリックスペースのすばらしさこそ、このホテルの真骨頂。夕陽に輝く山並みを眺めながらのカクテルタイム。天の川まではっきりと見える満点の星降る夜空にうっとりしながら、コテージへ戻るひとときの散歩。
朝はちょうど日の出の時、美しい稜線の背後をオレンジに染める時、早起き鳥のさえずりが聞こえ、スプリングボックが飛び跳ねるのが見え、そんな中、オープンテラスで早朝のモーニングコーヒーを楽しむ。
限りなく爽やかで気持ちのいい、まさに至福のひとときであった。