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トルコの伝統競技、オイルレスリングの歴代レスラー像
トルコ旅行と聞いて、イスタンブールやカッパドキアを思い浮かべる方は多いでしょう。しかし、トルコ北西部には、まだ日本ではそれほど知られていない魅力的な町があります。それが、ギリシャとブルガリアの国境近くに位置するエディルネです。
かつてオスマン帝国の都として栄えたエディルネには、世界遺産のセリミエ・モスクをはじめ、歴史的建造物や伝統工芸、独自の食文化が今も残されています。さらに周辺のクルクラレリやテキルダーまで足を延ばせば、陶芸体験やワインテイスティングなど、見るだけではない「体験する旅」も楽しめます。
今回は、実際に訪れて印象に残ったエディルネとその近郊の魅力をご紹介します。
アヤソフィア超えの大傑作

セリミエ・モスク
エディルネを訪れたら、まず外せないのがセリミエ・モスクです。
オスマン帝国を代表する建築家ミマール・スィナンが手掛けたモスクで、スィナン自身が最高傑作と考えていたといわれています。2011年には「セリミエ・モスクと複合施設群」として、ユネスコの世界遺産に登録されました。
最大の特徴は、直径約31.5メートルの巨大なドーム。その重量を8本の大きな柱で支える構造になっており、内部に入ると、柱に視界を遮られにくい開放的な空間が広がります。大ドームを持つイスタンブールのアヤソフィアに匹敵し、それを超える空間を目指したとも語られる建築です。
巨大なドームを見上げる
見上げても一度には視界に収まりきらないほどのドームと、窓から差し込む光、繊細な装飾。その迫力は、写真だけではなかなか伝わりません。また、モスク内の中央に置かれた建物の柱にある逆さのチューリップの模様も有名です。私はなかなか見つけられず、周囲を何度もぐるぐると回ってしまいました。皆さんもぜひさがしてみてください!
実際に訪れてみて、「なるほど。これは確かに最高傑作だ」とつぶやいてしまうほど素晴らしいモスクでした。
| 施設名 | セリミエ・モスク |
| エリア | エディルネ |
| 住所 | Meydan, Mimar Sinan Cd., 22020 Edirne Merkez/Edirne, トルコ |

歴史に泊まる隊商宿

リュステム・パシャ・キャラバンサライ
エディルネでの宿泊先としてもおすすめしたいのが、リュステム・パシャ・キャラバンサライです。
オスマン帝国の大宰相リュステム・パシャの命により、ミマール・スィナンが設計し、オスマン帝国時代には、交易路を行き交う商人や隊商の宿泊施設として利用されました。
建物は中庭を囲むように造られており、1972年にホテルへ改修され、その修復事業は1980年にアガ・カーン建築賞を受賞しました。中庭を望めるようにテーブルや椅子が置かれ、歴史ある建物を眺めながらのんびりと過ごすことができます。宿泊者同士が自然に顔を合わせ、交流できる開放的な雰囲気も魅力です。

中庭を眺めながらくつろぐ
セリミエ・モスクまでは徒歩約5分の距離。客室によっては窓からセリミエ・モスクを眺めることもできます。朝や夕方など、時間によって表情を変えるモスクを部屋から楽しめるのは、このホテルならではの贅沢です。
実はこのホテル、スィナンもセリミエ・モスクを建設する際にここへ宿泊したそうなんです。
歴史を感じる建物に実際に泊まれるだけでなく、エディルネ観光の拠点としても便利なホテルです。
| 施設名 | Rüstempaşa Kervansaray Hotel |
| エリア | エディルネ |
| 住所 | Sabuni, Kurt Dereli Mehmet Sk. No:2, 22100 Edirne Merkez/Edirne, トルコ |
| TEL | +90 501 066 02 00 |
| 公式サイト | https://rustempasakervansaray.com.tr/en/ |
受け継がれる伝統工芸

伝統工芸を未来に繋ぐ工房
エディルネの文化をより深く知るために訪れたのが、デヴェジ・ハン文化センター内にある「Edirne Olgunlaşma Enstitüsü(エディルネ・オルグンラシュマ・エンスティテュス)」の工房です。
ここは、エディルネやルメリ、バルカン地域に伝わる工芸や文化を調査・保存し、次の世代へ伝えるための施設です。織物や革細工、陶芸、装飾工芸など、幅広い分野の技術が研究・継承されています。

エディルネカリ
エディルネを代表する伝統工芸の1つが「エディルネカリ」です。主に木製品に花や植物などの模様を描く装飾技法で、家具や箱、天井、書類入れなどに用いられてきました。華やかでありながら、どこか素朴で温かみのあるデザインが印象的です。
完成した作品を見るだけでなく、その裏側にある技術や作り手の思いに触れられるのが工房見学の魅力。観光名所を巡るだけでは分からない、エディルネの暮らしと文化を知ることができます。
| 施設名 | Edirne Olgunlaşma Enstitüsü(Deveci Han Kültür Merkezi内) |
| エリア | エディルネ |
| 住所 | Çavuşbey Mahallesi, Hükümet Caddesi, Deveci Han Kültür Merkezi, 22100 Edirne Merkez/Edirne, トルコ |
| TEL | +90 284 213 54 99 |
| 公式サイト | https://edirneolgunlasma.meb.k12.tr/ |
牛乳で色づく陶芸体験

陶芸体験
エディルネ近郊のクルクラレリでは、「Kırklareli İl Özel İdaresi Cazibe Merkezi」という施設で陶芸を体験しました。
セリミエ・モスクにまつわる「逆さチューリップ」と、バラをモチーフにした陶器に、酪農が盛んな地域の牛乳を塗って焼くことで色を付けます。最初に説明を聞いたときは、「牛乳だけで本当に色が出るのだろうか」と半信半疑でした。
牛乳を塗った後は、新聞に包んで火を付けるだけ。5分ほどで完成します。

きれいに焼き上がりました!
焼き上がった作品には、白かった陶器の表面に美しい茶色の焼き色が現れていました。
絵の具や一般的な釉薬とは異なる方法で色が生まれる過程は、とても斬新で興味深い体験をすることができました。
自分で作った作品を持ち帰れるのもうれしいポイント。旅先で買ったお土産とはひと味違う、世界に1つだけの思い出になりました。
古都の味!伝統料理

タヴァ・ジエリ
旅の楽しみといえば、やはり現地の料理。今回いただいたのは、タヴァ・ジエリとハイラボル・タトゥルスです。
タヴァ・ジエリは、薄く切ったレバーを油でカリッと揚げたエディルネの名物料理です。揚げた赤トウガラシなどを添えて提供されます。
レバー料理と聞くとクセの強い味を想像するかもしれませんが、実際に食べてみると、臭みが少なく香ばしい味わいでした。
エディルネを訪れたら、ぜひ1度は味わってほしい料理です。

ハイラボル・タトゥルス
ハイラボル・タトゥルスは、近郊のテキルダー県ハイラボルを代表する伝統菓子です。主に無塩チーズとセモリナ粉を使って作り、たっぷりのシロップを染み込ませて仕上げます。
見た目から甘そうだとは思っていましたが、実際に食べてみると想像以上の甘さ。私は半分ほどで十分でした。トルコのスイーツは全体的に甘いものが多いですが、その中でもかなり甘さの強いデザートです。
甘いものが好きな方にはおすすめですが、甘さが苦手な方は何人かで分けながら味わうのがよいかもしれません。
音と水で癒す医療博物館

バヤズィト2世複合施設健康博物館
エディルネでぜひ訪れてほしい博物館の1つが、バヤズィト2世複合施設健康博物館です。
この施設は、スルタン・バヤズィト2世によって1484年から1488年にかけて建設された複合施設の一部です。かつては病院や医学学校、モスク、炊き出し施設などが集まっていました。
館内では、オスマン帝国時代の医療や治療の様子が、蝋人形を使って再現されています。患者や医師の姿がとてもリアルに造られており、当時の医療現場に入り込んだような感覚に。

当時を今に伝える蝋人形
特に驚いたのが、心の病を抱える患者に対し、音楽や水の音を利用した治療が行われていたことです。薬だけではなく、人の感覚や心に働きかける方法が取り入れられていたことに、当時の医療技術と考え方の奥深さを感じました。少し怖さを感じるほどリアルな展示もありますが、オスマン帝国時代の医療を分かりやすく学べる、非常に見応えのある博物館です。
| 施設名 | バヤズィト2世複合施設健康博物館 |
| 住所 | Yeniimaret, 22000 Edirne Merkez/Edirne, トルコ |
熱狂!オイルレスリング

オイルレスリング大会
エディルネを代表する伝統行事が、クルクプナル・オイルレスリングです。トルコの伝統競技であるオイルレスリングの大会で、その歴史は660年以上あります。
選手たちは「クスベット」と呼ばれる革製のズボンをはき、全身にオリーブオイルを塗って試合に臨みます。体が滑るため、相手をつかむだけでも簡単ではありません。力だけでなく、技術や持久力、駆け引きが求められる競技です。
会場では、広い競技場の中で約20組もの選手が同時に試合を行います。それぞれの場所で決着がつくたびに、客席のあちらこちらから大きな歓声が上がっていました。

会場中大盛り上がり!
どの試合を見ればよいのか迷うほど多くの試合が同時進行し、会場全体が熱気に包まれていました。観客の声援や選手たちの迫力に圧倒され、見るだけでも十分に楽しめます。
クルクプナル・オイルレスリングは、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。大会の時期にはトルコ各地から多くの人がエディルネへ集まるため、ホテルの予約が取りにくくなります。観戦を希望する場合は、早めに宿泊先を確保しておくのがおすすめです。
黄色に染まる地平線

遠くまで続くひまわり畑
私が最も気に入ったのは、遠くまで広がるひまわり畑。
エディルネ近郊を車で走っていると、道路沿いに見渡す限りのひまわり畑を見ることができます。どこまでも続く黄色い花々は、まるで大地を埋め尽くす黄色のじゅうたんのよう。日本ではなかなか見られないこの光景は、イスタンブールからの車移動をちっとも退屈させません。

太陽を背に咲き誇るひまわり
歴史的建造物だけでなく、移動中にも雄大な景色を楽しめることが、この地域の魅力だと思います。広大な大地に咲き誇り、夕日に照らされたひまわり畑は、旅の途中で出会った忘れられない風景です。
大地が育むトラキアワイン

ワインテイスティング
エディルネ、クルクラレリ、テキルダーが位置するトラキア地方は、トルコのワイン産地としても知られています。
今回は、クルクラレリにあるDessera Bağ Eviのレストランと、Bakucha Vineyard Hotelでワインテイスティングを体験しました。
最も印象に残ったのは、広大な大地にどこまでも続くブドウ畑です。見渡す限り一面にブドウの木が広がる景色は圧巻で、この土地の自然とワイン造りが深く結び付いていることを実感しました。

広大なブドウ畑
ワインテイスティングでは、種類によって異なる色や香り、味わいを少しずつ比較できます。ワインに詳しくなくても、実際にブドウが育つ土地を眺めながら味わうことで、いつもとは違うワインの楽しみ方ができました。Bakucha Vineyard Hotelは、アルカディア・ヴィンヤーズの中にある滞在型のワインホテルです。ワインだけでなく、地元の食材を生かした料理や自然に囲まれた滞在も楽しめます。観光地を慌ただしく巡るだけではなく、ワインと風景を楽しみながらゆっくり過ごしたい方におすすめです。
| 施設名 | Dessera Bağ Evi |
| 住所 | Ahmetçe Köyü No:75, Dönmez Çiftliği, 39180 Kırklareli, トルコ |
| TEL | +90 530 442 15 66 |
| 公式サイト | https://desserabagevi.com/ |
スィナンが遺したモスク

リュステム・パシャ・モスク
エディルネからイスタンブール方面へ向かう途中に立ち寄りたいのが、テキルダーにあるリュステム・パシャ・モスクです。
1554年、大宰相リュステム・パシャによって建てられたモスクで、設計はセリミエ・モスクと同じミマール・スィナンが担当しました。
建物には切石が使われ、右側には1本のミナレットが立っています。クルミ材に象牙をはめ込んだ入口の扉や、扉と窓に施された幾何学模様も見どころです。

スィナンならではの縞模様のアーチが美しい
もともとはモスクだけでなく、神学校や市場、キャラバンサライ、ハマム、図書館などを含む複合施設でした。現在もモスクや市場などの一部が残り、テキルダーの歴史を伝えています。
壮大なセリミエ・モスクとは異なり、落ち着いた雰囲気の中でスィナン建築の細部をゆっくり見学できます。エディルネとイスタンブールを結ぶ旅程に組み込みやすい、近郊のおすすめスポットです。

まとめ

伝統工芸の織物制作風景
エディルネを訪れて感じたのは、この街の魅力はセリミエ・モスクだけではないということでした。歴史あるキャラバンサライでの滞在、受け継がれてきた伝統工芸、牛乳を使った陶芸体験、伝統料理やワインなど、街を歩くたびに新しい文化と出会うことができます。オイルレスリング会場の熱気や、当時の医療をリアルに伝える博物館、ミマール・スィナンが遺した建築も見逃せません。

ワイナリーホテルから望む夕景
そして郊外へ向かう道路沿いでは、見渡す限りのひまわり畑が目の前に広がります。黄色い花々が大地を埋め尽くす光景は、歴史的な街並みとはまた違った、エディルネの豊かさを感じさせてくれました。
歴史、文化、食、伝統、そして雄大な自然。さまざまな魅力が詰まったエディルネは、知れば知るほど奥深く、もう1度訪れたくなる街です。イスタンブールとはひと味違うトルコに出会いたい方は、ぜひエディルネまで足を延ばしてみてはいかがでしょうか。
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