ケム川沿いの緑豊かな風景
皆さんもご存じの通り、ケンブリッジは学問と歴史を象徴する街であり、多くの有名人や学者を輩出してきた、世界屈指の知の都です。街全体には合わせて31もの現役のカレッジが点在し、歴史ある荘厳な建築やそれを取り巻く自然、若者たちの声が調和する雰囲気は、この街ならではの魅力。今回は、一日約2万歩を歩きながら見つけたケンブリッジの見どころや、その魅力についてご紹介します。
知の街ケンブリッジ

ケム川沿いを歩く
ロンドンから日帰りで足を延ばせる距離感でありながら、ここケンブリッジはロンドンとはひと味違う活気があります。どこか新しいのに、数百年の歴史をもつ建物に囲まれ、タイムスリップしているような感覚になる一方で、学生や学者、自転車が行き交う風景には現代的なエネルギーも感じられ、まるで過去と現在が同じ時間を刻んでいるような街でした。

ケンブリッジを流れるケム川でパンティング
私はそれまでイギリス中部のピーク・ディストリクトの雄大な田園風景やノッティンガムを巡っていたため、イギリス東部へ移動してから街の雰囲気がガラッと変わったことが特に印象に残っています。自然豊かな郊外都市とは異なる、どこか知的で洗練された空気が、ケンブリッジには息づいていました。

街全体がキャンパス

ケム川から望むケンブリッジの歴史ある学舎
ケンブリッジを歩いていてまず驚いたのは、街と大学の境界がほとんど感じられないことでした。歴史ある建物を見つけて「この建物は古そうだから大学の校舎かな」と思えば老舗ホテルだったり、「教会かな」と思えば大学の研究施設だったり。その逆もあり、初めて訪れる人はきっと何度も足を止めてしまうはずです。
私も何気なく入ったお土産店で、店内に並ぶケンブリッジ大学のグッズを眺めていました。店を出ると、目の前にはカレッジの門があり、卒業写真を撮る学生や、それを見守る家族の姿がありました。観光の途中で、学生たちの人生の節目に偶然立ち会えたような気がして、その光景が今でも印象に残っています。

ケンブリッジ大学のカレッジ群を散策
ケンブリッジ大学には、日本の大学のような一つの広大なキャンパスはありません。31のカレッジが街のあちこちに点在し、人々の日常の中に溶け込んでいます。学生が自転車で駆け抜け、その横を観光客が歩き、地元の人が買い物へ向かう。同じ石畳の道を、それぞれの時間を過ごす人たちが自然に行き交う風景。まるで映画のワンシーンのようで、その中に混じって歩きたくなってきますよね。
| 施設名 | Indelibly Cambridge |
| 住所 | 7-8 King’s Parade, Cambridge CB2 1SJ UK |
| TEL | +44 1223 313970 |
| 公式サイト | https://www.indeliblycambridge.com/ |
カレッジ巡り

ケンブリッジ大学「ニュートンの木」
ケンブリッジを代表するカレッジは壮麗ながらも繊細なレリーフが施されたゴシック建築で、それぞれ長い歴史と数多くの逸話が受け継がれています。
キングス・カレッジやトリニティ・カレッジをはじめ、街を歩けば次々と歴史あるカレッジが現れます。門の前に立つたびに、「もし自分が通えるなら、どの大学にしようかな?」なんて想像するのもこの街ならではの楽しみ。石畳の道の先に礼拝堂があり、歴史ある門をくぐれば何百年も前から変わらない校章が目に入る。そして、ニュートンが万有引力の着想を得たと伝わる「リンゴの木」に出会う。そんな景色を追いかけながら歩いていると、知の歴史のすぐそばを歩いているような、不思議な高揚感がありました。

ケンブリッジ大学のカレッジ群を散策
けれど、ケンブリッジの魅力は有名な建築や名所だけではありません。何気なく壁を見ると落書きを見つけて、「この校舎の壁に落書きがある!数百年前の学生が付けたのかな?」と想像してみたり、街角の雑貨店の足元にひっそり置かれた小さなドールハウスを見つけて、ささやかな遊び心に思わず足を止めたり。観光名所を巡るだけでは気づかない、思いがけない発見が次々と現れるのです。
自転車と路地、暮らし

ケンブリッジ大学のカレッジ群を散策
この上品な街並みの中で最も印象的だったのは、数え切れないほどの自転車の存在。カレッジの門の前にも、石造りの橋のたもとにも、細い路地にも、何十台もの自転車が並び、学生たちは慣れた様子で風を切って走り抜けていきます。観光名所としてだけでなく、大学街の日常に、ほんの少しでも溶け込めるのが嬉しかったです。
ケンブリッジの街の牛
ケンブリッジは、世界中から観光客が訪れる街である一方で、今も学生たちが学び、暮らす現役の学術都市です。そのため、お土産店やカフェが並ぶだけでなく、書店や研究施設、昔ながらのマーケット広場など、人々の日常が街のあちこちに息づいています。なんと、大きな体の牛も群れをなして木陰で休憩していたり、駐輪場に立っていたり!
名物のパンティング体験

ケンブリッジを流れるケム川でパンティング
ケンブリッジを訪れるなら、ぜひ体験していただきたいのが、ケム川を進む「パンティング」!
ケム川はケンブリッジの街の中心を流れる穏やかな川で、その景観とともに街の歴史を育んできました。平底のボートを長い竿で川底を押しながら進むパンティングは、もともと交通手段でしたが、今では多くの人が楽しむ特別な体験になっています。
川沿いでは船頭たちが気さくに声を掛けてくれるので、その場で乗船することもできますし、チケットカウンターで希望に合ったツアーを選ぶこともできます。大人数で楽しめるボートから、カップルや家族だけでゆったり過ごせる貸切ボートまで、お好みで選べるのも魅力です。
ボートがゆっくりと岸を離れると、陸を歩いているだけでは見られない景色が次々と現れます。世界的に名高いカレッジの芝生、重厚な建物の裏側、木々の間からのぞく尖塔。水面に映る建築を眺めていると、時間までゆっくり流れているようでした。

ケンブリッジを流れるケム川でパンティング
私が乗船したボートでは、現役のケンブリッジ大学生が船を操りながら案内をしてくれました。「実はこのカレッジが一番○○なんです」といった学生ならではの身内話や、ケンブリッジゆかりの偉人のエピソード、この街でおすすめのレストランまで教えてくれ、約20分とは思えないほど内容の濃い時間でした。
途中には「ため息橋」や「数学橋」といった名所も紹介してくれます。陸からでは見ることのできないカレッジの表情を知ることができるのも、パンティングならではの魅力。ボートが桟橋へ戻る頃には、「もう少しこのままでいたい」と思っている自分がいました。
イノベーション都市として

ラヴェナム The Swan at Lavenham 外観
何百年もの歴史を持つ街を歩いていると、つい「ケンブリッジは過去を大切に守る、遺産の街」という印象を抱きがちです。しかし、この街の魅力と可能性は、それだけではありません。

ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ
ケンブリッジは今なお世界ランキング上位の常連であるほど有名な学術都市であり、「シリコンフェン」と呼ばれる世界有数の研究・技術開発拠点としても知られているのです。大学を中心に研究機関やテクノロジー企業が集まり、科学やAI、バイオテクノロジーなど、未来を切り拓く研究が日々行われています。今後のケンブリッジの発展が楽しみでもあり、今見ている街の景色がどう変遷していくのか考えると、不思議な気持ちになります。

ケンブリッジ、おすすめです
ゴシック建築を代表するキングス・カレッジ・チャペル
はっと驚くほどの年月を重ねた建物や、長い時を刻んできた石畳。ヨーロッパ映画で見たような美しさに心を奪われながら歩いていると、すぐそばを学生たちが自転車で軽やかに通り過ぎていきます。そして、この風景の中で、世界最先端の研究が進められている。そのことが少し不思議でありながら、ごく自然に街へ溶け込んでいるのが印象的でした。半日かければケンブリッジ大学のカレッジ群を門の外や庭から眺めて建築様式やカラーを感じ取ることができ、ついでに地元のスーパーマーケットで紅茶に合いそうなお菓子も買えます。
ロンドンから日帰りで気軽に訪れられる距離なのに、ここに着くと時間の流れがふっと緩やかになります。喧騒の国際都市ロンドンとも、重厚な雰囲気をまとった街オックスフォードとも違う、静かでやさしい時間です。

Graduate by Hilton Cambridge バルコニー
ケンブリッジはまさに、キャンパスと街が一体化した構造。
「大学のある街」というより、「街そのものが大学」。そんな言葉が、ケンブリッジにはよく似合うと感じました。
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