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モンサル・ヘッドから望むモンサル・デール高架橋
風が湿原を渡り、雲の影が丘の斜面を流れていく。その間を縫うように歩いていると、初めて訪れた地でありながら、不思議と懐かしい気持ちになりました。
中世から時が止まったような石造りの村、羊や牛や水鳥のいる高原、ふと足を止めたくなる山々の眺め——都市の喧騒から離れたくなったら、ロンドンとはひと味違うイギリスに出会いたいなら、ピーク・ディストリクトへ。イギリス中部で見つけた、静かで奥行きのある旅をお届けします。
イギリス最古の国立公園へ

ホープバレー ピークディストリクト国立公園<ピークディストリクト国立公園>
マンチェスター空港から車で約30分。1951年にイギリス初の国立公園として登録されたピーク・ディストリクトが広がります。少しでも高い場所から景色を眺めようと丘を登り、展望地から見渡すと、石垣で区切られた牧草地や遠くに横たわる山々がどこまでも。まるで一枚の風景画のようでした。ゆるやかに広がる丘陵地帯と牧草地が織りなす景観は、都市部とは異なる、「これぞイギリス」と思わせるのどかな眺めそのもの。

チャッツワース・ハウス
歴史ある建物の周辺では、芝生に腰を下ろして読書やピクニックを楽しむ人々の姿も見られ、自然と暮らしが調和する様子が羨ましく印象的でした。標高はそれほど高くないものの視界が開けており、イギリスらしい田園風景を存分に満喫できます。長い年月をかけてイギリス人の暮らしと豊かな自然が育んできた景観は、ピーク・ディストリクトがイギリス国内外の多くの人に愛され続ける理由に気づかせてくれました。
| 施設名 | ピーク・ディストリクト国立公園 |
| 公式サイト | https://www.peakdistrict.gov.uk/home |

夏の始まりの景勝地

チャッツワース・ハウスの庭園
「ピーク・ディストリクトの宝石」とも称されるチャッツワース・ハウスは、デヴォンシャー公爵家の壮麗な邸宅と、広大でありながら隅々まで整備された庭園が大きな魅力。私が訪れた7月初頭には青々とした芝生や湖畔が心地よい空間を生み、木陰や水辺では読書やピクニック、デートを楽しむ人々の姿が。観光地でありながら、地元住民の憩いの場として親しまれている様子からも、この場所が長く愛され続けてきたことが伝わってきますね。今でも年間3000万人がこの地を訪れるんだとか!

チャッツワース・ハウス
庭園を歩くと、季節の花々が色鮮やかに咲いていました!草花は季節ごとに丁寧に手入れされた植栽が訪れる人の目を楽しませてくれます。チャッツワース・ハウスでは、ゆっくりと自然のパワーを浴びながら散策し、イギリスの夏の始まりを肌で感じる贅沢なひとときを過ごせました。
| 施設名 | チャッツワース・ハウス |
| 住所 | Chatsworth, Bakewell, Derbyshire The postcode for Chatsworth is DE45 1PP UK |
| TEL | 44 1246 565300 |
| 公式サイト | https://www.chatsworth.org |

チャッツワースハウス 天井絵画<ピークディストリクト国立公園>
なだらかな丘陵地帯を歩く

絶景スポット「モンサルヘッド」<ピークディストリクト国立公園>
ピーク・ディストリクトを代表する絶景スポット、カーバー・エッジでは、なだらかな草原の丘を踏みしめながら、雄大な景観を楽しむことができます。険しい登山道ではなく、風を感じながら散策できるため、気軽に自然と触れ合えるのも魅力の一つ。足を止めるたびに表情を変える景色と雲が広がり、散歩時間そのものが特別な体験になります。乗り継ぎ含めて18時間近くのフライトの疲れも、気づけば忘れてしまっていました。
カーバー・エッジから望むダーウェント渓谷
展望地点に立つと、眼下にはダーウェント渓谷が広がり、天候が良ければその先に小さなチャッツワース・ハウスの姿を望むことも。緩やかな起伏を描く丘陵や石垣で区切られた牧草地が織りなす風景は、ピーク・ディストリクトらしい牧歌的な景観そのもの。疲れた時、風の中で歩きたい時、何度でも訪れたくなるイギリス屈指のビュースポットでした。
童話の世界の村にうっとり

エデンサー村
村のシンボルである小さな教会が佇み、その周囲を石造りの家々が囲む風景は、まるで幼い頃に見た絵本の挿絵のよう。ピーク・ディストリクトには、中世から何世紀もの歴史に継がれる小さな村々が点在しており、華やかな観光地とは異なる素朴な魅力にあふれています。教会を中心に広がる穏やかな暮らしは、イギリスのカントリーサイドらしい落ち着いた雰囲気を感じさせ、統一された綺麗な濃い青色の塀やドアを眺めながら歩くだけで心がほどけていくようでした。

エデンサー村の住民による無人販売スタンド
村を歩いていると、採れたてのフルーツや自家製はちみつ、焼き菓子などを並べた無人販売のスタンドに出会いました。何気ない日常の断片に触れられることも、田舎の村を訪れる醍醐味の一つでした。
田園地方を味わう旅

チャッツワース・ハウスでのアフタヌーンティー
旅の楽しみの一つは、その土地ならではの食文化に触れること。そして、イギリスと言ってまず思い浮かぶ方も多い、アフタヌーンティー。チャッツワース・ハウスでは、美しい庭園を窓の外に見ながら本場のアフタヌーンティーをいただきました。香り高い紅茶と、軽食のサンドイッチや小さくも華やかなスイーツが並ぶ優雅なティータイムを過ごせました。スコーンにベリージャムとクロテッドクリームをたっぷりのせて、口いっぱいに頬張る幸せを満喫しました。歴史ある邸宅の落ち着いた雰囲気も相まって、日本とはまた違う、自然と背筋が伸びるような時間が流れていました。

伝統スイーツのベイクウェル・プディング
ピーク・ディストリクト南端の町・ベイクウェルでは、名物の「ベイクウェル・プディング」も味わいました。サクッとしたパイ生地にジャムとアーモンド風味のフィリングを何重にも重ねて焼き上げるこの郷土菓子は、19世紀に誕生したといわれる伝統のお菓子。プディング自体は優しい甘さなのですが、付け合わせのカスタードとクリームは、思わず笑みがこぼれるほど濃厚でした。私が訪れたお店では、1回20分のプディング作り体験もあるそう。
| 施設名 | The Old Original Bakewell Pudding Shop |
| 住所 | The Square, Bakewell DE45 1BT UK |
| TEL | 44 1629 812193 |
| 公式サイト | https://bakewellpuddingshop.co.uk |
イギリスの文化遺産
チャッツワース・ハウス 衣のひだを精巧に表現した彫刻
イギリス屈指の貴族の館として知られるチャッツワース・ハウスには、代々受け継がれてきた美術品や調度品が数多く展示されています。中でも、写真の彫刻は、元は一つの大理石でありながら風になびく布のやわらかな動きや肌の質感まで表現しており、思わず足を止めて見入ってしまうほどの精巧さ。本物を見ると言葉を失うとはこのこと。

ハドン・ホールの花の庭園
一方、中世の趣を色濃く残すハドン・ホールでは、歴史ある建物と美しく手入れされた庭園が調和し、静かで素朴な時間が流れています。季節の花々が彩る庭園は、館の重厚な石造りの建築をやさしく引き立て、長い年月を経ても大切に守られてきた美しさを感じさせます。イギリスでは建築や芸術だけでなく、イギリス式ガーデニングもまた、次の世代へ受け継がれる大切な文化遺産であることを改めて知ることができました。
| 施設名 | Haddon Hall |
| 住所 | The Estate Office, Haddon Hall, Bakewell DE45 1LA UK |
| TEL | 44 1629 812855 |
| 公式サイト | https://www.haddonhall.co.uk |
体験・滞在型旅行のすすめ

チャッツワース・ハウスの庭園を巡るガイド付きカート
体と心を動かしてその土地の魅力を存分に浴びることで、旅の思い出を一生ものにアップグレードできます。例えばチャッツワース・ハウスでは、館内に展示された美術品やコレクションを触れられるほどの距離で鑑賞したり、広大な敷地内を、紳士服に身を包んだガイドが運転するゴルフカートで風を切って走ったりすることができます。
チャッツワース・ハウス ラファエル・モンティ作『ヴェールをかぶったヴェスタの処女』
慌ただしく名所を巡るだけでは気づけない草花の呼吸や雲の動き、現地の人々が交わす会話を感じながら、五感を動かして過ごす時間は、アルバムには残らない特別な思い出になるはずです。

イギリスの魅力は郊外都市に光る

ピークディストリクト国立公園スタネージエッジからの夕日<ピークディストリクト国立公園>
ロンドンの華やかな町並みや刺激的な観光体験も魅力ですが、少し足を延ばすと、イギリスらしい穏やかな時間が流れる郊外の町に出会えます。ピーク・ディストリクトの玄関口・ベイクウェルは、その代表的な存在。町の中心を流れるワイ川には歴史ある石橋が架かり、落ち着いた町並みが水辺の景色に溶け込んでいます。「イギリスといえば」とも言われる曇り空の下でも、その静かな美しさは色あせることなく、上品な情緒を感じさせてくれました。
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