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アメリカンミュージックの聖地ベスト7【音楽を巡る旅】

ニューオリンズのストリートカー

ニューオリンズのストリートカー

2018年、韓国のボーイズグループ・BTSが全米「ビルボード200」チャート1位を獲得したことは記憶に新しい方も多いでしょう。韓国人アーティストというカテゴリーにとどまらず、アジア圏初のチャート1は史上初の快挙です。
ところで、なぜ「ビルボード」のチャートがそこまで重要視されるのでしょうか?-答えは簡単。アメリカの音楽産業が(映画産業と同様に)規模的・影響的に世界のトップを走り続けているからにほかなりません。現代のポピュラーミュージックを語る上で、アメリカの文化は切り離せない関係と言っても過言ではありません。

今回はそんなポピュラー音楽最前線である、アメリカ音楽の聖地と呼ばれる7つの都市にスポットをあて紹介したいと思います。
素晴らしい音楽は、時に雄大な風景や歴史ある建物よりも、胸を打つ感動を与えてくれますよ!

ニューヨーク(ヒップホップ)

人気アーティストを生んだハーレムのアポロ・シアター

人気アーティストを生んだハーレムのアポロ・シアター

まず紹介するのは、ニューヨーク。ニューヨークはジャズやミュージカルの最先端の街、あるいはヴェルヴェット・アンダーグラウンドやイギー・ポップに代表されるようなアートの雰囲気漂う反体制的なニューヨーク・パンクが生まれた場所としても知られていますが、何と言ってもニューヨークは今やポピュラーミュージックの主軸となった、ヒップホップの発祥地として知られています。

冤罪に抗議するグラフィティ・アート

冤罪に抗議するグラフィティ・アート

ヒップホップは1970年代初頭に、ニューヨークのサウス・ブロンクス地区で生まれたと言われています(ウエスト・ブロンクスという説もあり)。ラップミュージック最初のヒットはシュガーヒル・ギャングの「Rapper’s Delight」(https://youtu.be/rKTUAESacQM)。当初は、77年の映画「Saturday Night Fever」などの影響で人気だったディスコに代わる新しい音楽として売り出されたそうです。

そんなヒップホップの聖地であるブロンクスを個人で観光するのは治安の面からあまりお勧めできませんが、2019年にヒップホップの博物館とも言える「Revolution of HipHop」がサウスブロンクスにオープンしました(ヤンキー・スタジアムのそばの立地です)。館内には1970年代の落書き(グラフィティ)だらけの地下鉄のレプリカやヒップホップ黎明期の貴重な機材や資料が展示されています。(2023年10月現在、休館中です)

現地に詳しいニューヨーク在住のプライベート日本語ガイドに依頼すると、よりヒップホップへの理解が得られそうですね!

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シカゴ(ブルース)

有名ブルースクラブ Kingston Mines

有名ブルースクラブ Kingston Mines

シカゴを代表する音楽・ブルース。
ブルースはアメリカ南部で元々は奴隷として連れてこられた黒人の労働歌(フィールドハラー)が発展したものと言われており、黒人としての生きづらさ、貧しさ、生活の苦悩などの魂のこもった内容を、抑揚の聞いた節回しと独特なリズムで歌いあげる事で黒人社会に定着していきました。
南部発祥のブルースが、なぜ20世紀初頭に北部のシカゴで盛んになったのでしょうか?

Wicker Parkにあるレコード店

Wicker Parkにあるレコード店

実は1930年から50年代にかけての北部工業地帯の発展とともに黒人労働者達が北部に移り住むことで、多くのミュージシャンも北部へ移動し、シカゴにおいてブルースは新たな息吹を吹き込むことになったのです。
その代表格がマディ・ウォーターズによる、エレキギターとバンドスタイルのブルース(https://youtu.be/e_l6A7krjrQ)。それまでのアコースティックな弾き語りのブルースと一線を画したサウンドはのちのチャック・ベリーに大きな影響を与え、その後のロックバンドにも受け継がれていきました。そんな世界の音楽シーンを変えたシカゴ・ブルースは今もシカゴの夜に鳴り響き、人々の心を掴んでいます。

メンフィス(ロックンロール)

老舗クラブ B.B.King Blues Club

老舗クラブ B.B.King Blues Club

ロックンロールが生まれた街・メンフィス。
メンフィスはあのエルヴィス・プレスリーが育ち、晩年を過ごした街としても知られています。幼少期メンフィス郊外に引っ越してきたエルヴィスは、周囲に貧しい黒人家庭が多かったことから、R&Bなど黒人音楽を聞いて育ったといいます。当時、今よりも治安の悪かったビールストリートにある黒人向けのお店に音楽を聴くために入り浸っていたのだとか。

ミュージック・バーがひしめくビールストリート

ミュージック・バーがひしめくビールストリート

1954年にデビューしたエルヴィスは瞬く間に若者達に支持されました。黒人の音楽を取り入れたエルヴィスの歌唱スタイルは非常に画期的なものだったのです。当時は公民権運動が始まる前で、人種差別がまだまだ根深い時代の出来事でした。エルヴィス自身も強い非難を受けましたが、結果ビートルズやボブ・ディランを始め多くのミュージシャンに影響を与えたのです。(https://youtu.be/gj0Rz-uP4Mk

メンフィスに来たなら、ライブハウスがひしめくビールストリートやエルヴィスが最初にレコーディングしたというサン・スタジオ博物館は必見です。
そしてエルヴィスファンならメンフィス郊外のグレイスランドに訪れない訳にはいきません。エルヴィスが生前住んでいた巨大な邸宅で、現在は博物館となっています。見学にはまる1日かかるほど巨大な場所ですので、たっぷり時間をとってから行くのがいいですね。

ニューオリンズ(ジャズ)

有名ジャズバー フリッツェルズ

有名ジャズバー フリッツェルズ

ジャズの発祥の地・ニューオリンズ。
ジャズの発祥地としては有名ですが、なぜジャズはニューオリンズで生まれたのでしょうか?そのヒントは名前にあります。「New Orleans」、つまり「新しいオルレアン」の名前の通り、ルイ15世の摂政オルレアン公フィリップ2世に由来しています。
そうです、ニューオリンズはかつてフランス領でした。1763年パリ条約によりルイジアナはスペイン領となりますが、街にはフランス系住民が多かったため、現在でも歴史地区「フレンチクォーター」を中心に多くのフランス統治時代の面影を街中で見ることができます。

フレンチクォーターのストリートミュージシャン

フレンチクォーターのストリートミュージシャン

フランス人やクレオール(白人と黒人の混血)が住む多種多様な文化的土壌があったからこそ、ニューオリンズでジャズは誕生したのです。

ニューオリンズに来たならぜひ訪れていただきたいのが「プリザベーションホール」。元々はニューオリンズの伝統的なデキシーランドジャズを保存する目的で1961年にオープンした由緒あるクラブですが、1750年代に建てられたフレンチクオーターの中で最古の建物の1つ。本場の雰囲気を味わいたい方にはこれ以上ない、うってつけのジャズクラブです。(https://youtu.be/b7M8ZkQma3I
なお会場は1日3回の入れ替え制ですので、事前にネット予約しておくのが確実です。

オースティン(ライブミュージック)

テキサス州会議事堂

テキサス州会議事堂

今回紹介する7都市の中で最も知名度が低い都市かもしれませんが、実はオースティンは「ライブ・ミュージックの首都」とも呼ばれている街なのです。街の中心地である6thストリートには生演奏が聞けるパブやバーがひしめきあい、夜な夜な熱のこもった若者達の演奏を楽しむことができます。なんと生演奏が聴ける会場は100を超えるのだとか。(https://youtu.be/rL1n-ClnYyk)

オースティンを「ライブ・ミュージックの首都」として有名たらしめた理由は、名門テキサス大学を抱えており白人のみならず黒人、ヒスパニックなどの多様な人々が住み、若くリベラルな雰囲気が漂うからと言う理由だけではありません。
1987年に音楽祭として始まったSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)も、一役買っていることは間違いないでしょう。わずか700人の観客から始まった見本市も現在は50,000人にも昇る参加者が世界中から集うのですから。

オースティンに訪れたなら、ライブハウスだけではなく是非テキサス州議事堂にもお立ち寄りください。メキシコ領から「テキサス共和国」時代などアメリカ建国の歴史の1ページをここオースティンで感じられるはずです。

ナッシュヴィル(カントリー)

夜のザ・ディストリクト

夜のザ・ディストリクト

カントリーミュージックの聖地、ナッシュヴィル。
カントリーミュージックは日本ではあまり馴染みはないかもしれませんが、あのテイラー・スウィフトもカントリーミュージック出身のアーティストです。
そもそもカントリーミュージックとは何でしょうか?- 簡単に言えば、白人労働者階級のフォーク・ミュージックです。日本で例えると「演歌」までは行きませんが、「フォーク」「歌謡曲」的な立ち位置に近いかもしれません。元々は 開拓民の民謡から派生しているため故郷を想った抒情的な歌詞や素朴な生活を題材にすることが多いのが特徴です。

ナッシュビルの有名サルーン「ワイルドホース・サルーン」

ナッシュビルの有名サルーン「ワイルドホース・サルーン」

とは言え、バンド編成もギター・ベース・ドラムなどロックバンドと似ており、さらに主流のカントリーミュージックに対して、オルタナ・カントリー、アウトロー・カントリーなどが派生するなど、現代ではカテゴリーに捉われない音楽形態の1つとなっています。
それを象徴するのが、2019年に全米で大ヒットしたLil Nas Xの「Old Town Road」(https://youtu.be/r7qovpFAGrQ)が巻き起こした「ビルボード・ジャンル論争」でしょう。この曲は黒人ラッパーであるLil Nas Xがカントリーミュージックの要素をちりばめ、ビルボードの「カントリーチャート」でのランクインを狙ったものですが、後にビルボードは「Old Town Road」をチャートから除外するという出来事がありました。しかし、Lil Nas Xはカントリー界のレジェンドであるBilly Ray Cyrusをフィーチャーした「Old Town Road (feat. Billy Ray Cyrus)」をリリース。カントリーの大御所も認めたわけですからビルボードは「Old Town Road」を再度チャートインさせないわけにはいきません。

話が脱線しましたが、つまりカントリーミュージックは現代進行形で変化し続け、今やポピュラーミュージックを構成する重要な部分であることに誰も異論は持たないでしょう。

そんなカントリーミュージックの歴史を知るために足を運んでほしいのが、ナッシュヴィルの「ライマン公会堂」と「カントリーミュージックの殿堂博物館」。

「ライマン公会堂」はまさにカントリーミュージックの発祥の地とも言える場所です。元々は宗教施設なのですが、ここから放送されたラジオ番組「グランド・オール・オープリ」によりカントリー音楽の人気に火が付いた、と言われています。
そして、「カントリーミュージックの殿堂博物館」は有名カントリーミュージシャンの映像や使った楽器や衣装などが並んでいる博物館。当時のレコードの試聴やテレビ番組の映像など、ゆっくり見ていると1日でも過ごせそうなくらいのボリュームです。また「Taylor Swift Education Center」という、その名の通りテイラーが子供の教育のために特設したブースもあります。

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デトロイト(ブラックミュージック)

写真は同じく50年代後期に設立されたStax Recordの博物館にて

写真は同じく50年代後期に設立されたStax Recordの博物館にて

モータウン、これほど世界中を席巻したレコードレーベルは他にありません。
現在も続くブラックミュージックの隆盛の基礎を築いたのは、モータウン・レーベルの創始者であるベリー・ゴーディー・ジュニアの手腕があったからかもしれません。

ベリー・ゴーディー・ジュニアがプロデュースしたアーティストはマイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダー、マーヴィン・ゲイなど超大物揃い。
2020年に発表されたローリングストーンズ誌の名物企画「歴代最高のアルバム」500選(https://rollingstonejapan.com/articles/detail/34654)でナンバーワンに輝いたのはマーヴィン・ゲイの「What’s Going On」。4位にはスティービー・ワンダーの「Songs in the Key of Life」がランクインしました。

そんなブラックミュージックの聖地と言えるのが「モータウン博物館」。マイケル・ジャクソンやスープリームスの衣装などが展示された館内や大スターたちがレコーディングを行ったスタジオが当時のまま見学できます。

時代を経るにしたがって一層輝きを増す、モータウン・サウンド。
音楽は人種の垣根を超えて、人を夢中にさせますよね。
個人的には今後K-POPのみならず、88risingをはじめとするアジア系アーティストの躍進に期待をしたいところです。

追記:
「ウォール・オブ・サウンド」の生みの親であるフィル・スペクター氏が新型コロナウイルス感染に伴う合併症により2021年1月16日に逝去したとのニュースが入ってきました。本稿の構成上、フィル・スペクターに関しては触れていませんがアメリカンポップス史を語る上で、この人物なしで語れません。大滝詠一や山下達郎の名前を出すまでもなく、日本のロック・ポップス史に与えた多大な影響も誰の異論もないことでしょう。合掌。

今回のトラベルアドバイザー
橋本 康弘/112か国訪問

これまで旅した国は100カ国以上のトラベルプランナー。特に好きな国はイタリア、スイスやカザフスタンなどの中央アジア。ゲストハウスから5ツ星ホテルまで何でも体験するのがモットー。2020年はアメリカのコロラド州からモンタナ州までレンタカーでドライブする旅行を計画していたがコロナの影響で断念。

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