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バスクは何となく謎めいたエリアです。スペイン、フランスにありながら独立国のような雰囲気を持っています。ルーツが未解明な民族、独自の言語と文化を誇りながら、最近では世界の食文化をリードしています。意外に大昔から日本人とバスク人は交流がありました。
その人こそフランシスコ・ザビエルです。彼は当時のバスク人の王国ナバラ王国生まれ。その後、インド・ゴアなどを経て日本を訪問することになります。日本ともつながりのあるバスクへの旅に世界204カ国を訪問した経験のあるトラベルアドバイザー川崎とともに出かけてみませんか?
バスクの基本情報
バスク地方 | スペインとフランスにまたがりバスク人が居住するエリアがバスク地方。 |
バスクの人たち | 独自の文化と歴史も持っています。もちろんゲルマン民族でもないし、ラテン民族でもありません。 ケルト人に近いとも言われています。 |
バスクの面積 | スペイン・フランスのバスク地方あわせて2,0947平方km。四国くらいの面積となります。 |
バスクの人口 | スペイン・フランスあわせて約300万人ほど。 |
バスク語 | 約60万人の人はバスク語が話せるが、スペイン語、フランス語とのバイリンガル。 ちなみスペイン・バスクの人気都市サンセバスチャンはスペイン語での呼び方。バスク語ではドノスティアと呼びます。 サンセバスチャン滞在中はこの町のことをドノスティアと呼んで地元の人を喜ばせましょう。 |
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2泊しかない場合はサンセバスチャン滞在を
バスクに行きたい、しかし時間がない、他のエリアと組み合わせで行きたいという人も多いと思います。バスクに行くのなら、最低でも4泊は必要ですが、どうしても2泊しかない場合はスペイン側のサンセバスチャン2泊の滞在がおすすめです。1日ゆっくり市内観光をしてもいいですし、フレンチ・バスクへの日帰り旅行という選択肢もあります。
サンセバスチャンの空港は小さく、スペインの国内線がメインとなるため、バスクに入国する場合はビルバオ空港を選択してください。ビルバオ空港からサンセバスチャンへは空港バスで75分で行けます。
例えば、バスクとバルセロナの旅のモデルルートは下記のようになります。
日本→ビルバオ→サンセバスチャン2泊→バルセロナ3泊→機中泊→日本
サンセバスチャンからバルセロナは列車の他に国内線のフライトがあります。
いずれにしろバスクの手配は少し上級者向き。専門的な旅行会社で手配を頼むのが確実だし、安心です。その場合、旅行会社の大きさや知名度で選択するのではなく、バスク地方を専門にしているかどうか、またバスクに行ったことのある人が応対してくれるかも大切なポイント。
アクセス | 国際線の便があるビルバオ空港から車で75分。これが一番便利。 マドリードやバルセロナからは国内線の便があり、サンセバスチャン空港まで飛んでいます。 また、スペイン国鉄でマドリードやバルセロナから列車の旅という方法も。約6時間ほど。 |
ホテル | ホテルの数はそんなに多くないので混み合っています。 ビーチエリアよりも旧市街に近いロケーションの良いホテルを選択するのがおすすめ。 この町では遅くまでバル巡りを楽しみたいので、飲んだあと歩いて帰れるホテルを選ぶのが何よりも大切です。 |
フランス側1箇所滞在ならサン・ジャン・ド・リュズ
反対にフランス側に滞在する場合はどこがいいのでしょうか? フレンチバスクの中心都市はバイヨンヌ、大西洋岸のリゾート・ビアリッツなども考えられますが、バスクらしい町並みを見るのという点ではいま一歩。逆に私がすすめするのはバスクの美しい町や村での滞在です。
美しい町や村は山にあるのと、海辺にあるのと両方あります。山バスクでのおすすめはアイノア村、サール村などの小さな村での滞在。海バスクでのおすすめはサン・ジャン・ド・リュズでの滞在です。
このうちどちらがいいかというと、できたらどちらも滞在して2泊してもらうのをおすすめしますが、サン・ジャン・ド・リュズが一押しです。町の魅力はどちらか一方に軍配を上げるのは難しいですが、交通の便がいいのでサン・ジャン・ド・リュズがベスト。なにしろフランス国鉄の駅があり、本数は少ないですが、TVG(フランス新幹線)も運行しています。
サン・ジャン・ド・リュズはバスク風のかわいい民家がステキな海辺の町です。元祖マカロンの店「メゾン・アダム」があったり、バスク織り、エスパドリーユ、ベレー帽など、バスクの伝統的なお店巡りも楽しいです。
アクセス | パリからTGV(高速鉄道)で約4時間。ボルドーからは約2時間 |
ホテル | 普段は素朴な海辺の町だが、夏のバカンス時期は保養客で賑わう。その時期の予約は早めに。 |
定番ルートは2つのバスクを訪問
バスクの王道はもちろん2つのバスクを同時に訪問すること。それぞれの町に滞在するので、現地6泊か、それ以上が必要です。フランス側のゲートウェイはビアリッツ空港ですが、国内線中心で便がよくありません。それでボルドーにINする方がベターです。
ボルドーは旧市街が世界遺産だし、ワイナリー巡りもできるので、この際一緒に行ってみるといいでしょう。そのあと、フランスバスクのサン・ジャン・ド・リュズを訪問。そして、サン・セバスティアン泊、ビルバオ1泊で、ビルバオからOUTするというのが定番ルートです。
日本→ボルドー2泊→サン・ジャン・ド・リュズ1泊→サンセバスチャン2泊→ビルバオ1泊→機中泊→日本
このルートで行ける航空会社はエールフランス、KLMオランダ航空、ルフトハンザなどが考えられます。また、日本発夜便なら、ターキッシュエアラインも考えられます。
バスクの美しい町や村には必ず行きたい
スペインやフランスの旅がそうであるように、バスクでも美しい小さな町や村への旅は必須です。以下がおすすめの場所です。
○サン・ジャン・ピエ・ド・ポール(フランスバスク)→山バスクを代表する町。中世サンチャゴ巡礼の重要な宿場町で、ニーヴ川沿いの風景が美しいです。世界遺産にも指定されています。
○アイノア(フランスバスク)→17~18世紀に立てられた伝統的な民家がずらりと並ぶ光景は圧巻。バスクの人たちが守り続けてきた豊かな暮らしを垣間見ることができます。異国なのになぜか懐かしい風景だと感じます。
アクセス | サン・ジャン・ド・リュズから車で約30分。 日本から他の小さな町や村を専用車で周遊するプランを組んでみたい。 |
ホテル | あとで述べるアイノア村のオーベルジュ、イチュリアが超おすすめ。 この地方独特の建築様式がかわいい。家族経営で雰囲気も良い。 |
○エスプレット(フランスバスク)→白い壁に鮮やかな赤い窓の建物。まるで絵本のようなかわいい村です。壁に吊るされた唐辛子の深紅色が鮮やかです。辺り一面が紅白の世界に包まれ、迫力満点です。この村では唐辛子をA.O.C.(原産地統制名称)取得済み。本気で唐辛子を生産しています。
○オンダリビア(スペインバスク)→国境にある漁師町。スペインにありながらフレンチバスクの影響を受けた白壁に赤や緑の窓枠の町並みがステキです。
これらの町への公共交通機関はほとんどないため、専用車の手配が便利です。
アクセス | サンセバスチャンから約20km。バスで約30分。 不便なので日本から他の小さな町や村とともに専用車で回ってみたい。 |
ホテル | おすすめはパラドール・デ・オンダリビア。旧市街の中心、城塞を改築した歴史的なホテルです。 |
グルメ | 小さな町ですが、バルの数はそこそこ多い。この町でもバル巡りを楽しんでください。 |
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ミシュランの星付きレストランの体験はいかが?
サンセバスチャンがグルメの町と呼ばれるのは、小さな町にミシュラン星付きレストランがたくさんあるからです。世界中の旅人がグルメ目的でこの町にやってきます。そしてどれもが超人気店なので早めに予約を取らないと難しいです。
グルメレストランはどんどん値上がりをしています。3つ星の有名店ならランチもディナーも同料金でデギュスタシオンメニュー(おまかせ)が285ユーロ(45,731円)
、1つ星でも200ユーロ(32,092円)するので結構高いです。東京の1つ星のイタリアンのランチなら5,000円くらいでも食べられるので、いかに高いかわかります。
しかし、グルメの人はもちろん、グルメでない人も一度は行ってみたいものです。グルメでないけれど、一度はそうした店に行ってみたい場合、ミシュランのお店はパリでなく、ここバスクをおすすめします。その方がトレンドだし、印象に残るからです。ランチとディナーが同料金でもディナーではなく、ランチで行く方がいいでしょう。
なぜかというと、食事の開始時間。ランチは13時30分ごろ、ディナーは20時ごろ、正味3時間は最低かかる魂心の食事タイムです。ディナーなら24時くらいまでなってしまうので、ランチの方がいいのでは?
とにかく、見た目も美しく創作性のある美味しいバスクらしい小皿料理が次から次へと出てきます。思い出に残る至福のひとときになるはずです。
ピンチョスを求めて個性あふれるバル巡りを
予算の関係でミシュランの星付きレストランを断念したとしても、サンセバスチャンではバル巡りは必須。夕暮れになったらいざ出陣しましょう。どんな店があるかは、ホテルや観光案内所で地図をもらって、それを見て町歩きを楽しみましょう。トリップアドバイザーの情報も有益です。
しかし、お店選びは行ってみると極めて簡単です。人気店は混んでいて座れないくらいです。かたや人気のない店はがらがら。一目で人気店かどうかわかります。もちろん人気店に行きましょう。座れなくても平気です。1軒の店で一杯のドリンクと1品の料理を頼み、食べたら次の店へ・・・ そんなスタイルがバルの旅です。
バルによってお得意のピンチョスがあるので、1軒ずつ回っていろいろな味にトライしましょう。とにかく、一晩に3~4軒はしごするのは当たり前です。ドリンクはお酒でなくてもOKです。
美食の王国ではオーベルジュに泊まりたい
せっかく美食の王国バスクに来たのですから、特にフレンチバスクではオーベルジュでの滞在がおすすめです。以下はおすすめオーベルジュです。
○オーベルジュ・バスク AUBERGE BASQUE→サン・ジャン・ド・リュズから車で15分。牧歌的な風景の中にある1軒屋オーベルジュ。気鋭の若手シェフとしてアラン・デュカスに選ばれたセドリック・ベジャドがバスク創作料理を提供します。
○オテル・イチュリア HOTEL RESTRAUNT ITHURRIA→山バスク、フランスで最も美しい村にも認定されているアイノア村にあるオーベルジュ。モダンな建物のオーベルジュ・バスクとは対照的にこの地方独特の建築様式に外観がかわいい。バスク地方のスペシャリテにトライしてみたい。
○オスタペ OSTAPE→山里の隠れ家オーベルジュ。山の中腹45ヘクタールの広大な敷地を持ち、全室スィートルーム使用。山バスクの美しさを再認識させてくれるオーベルジュ。
○アラヤ SARA HOTEL RESTAURANT ARRAYA →スペイン国境、フランスで最も美しい村にも認定されているサール村のオーベルジュ。山バスクらしい風景とのんびりした雰囲気が居心地良い。
ワインの旅も楽しみたい
美食の旅バスクなのだから、ワインも一緒に楽しみたい。③のルートで説明したとおり、フランスバスクのゲートウェイはボルドーなのでワイナリー巡りはぜひ楽しみたい。世界的に有名な赤ワインの産地メドック、世界遺産に指定されたワイン桃源郷サンテミリオン、甘口ワインのソーテルヌ。1日で回りきれないほど行く場所があります。
また、スペインバスクではリオハも必見です。スペインで最も有名なワイン生産地の一つであり、その歴史は長く、この地でワインが生まれたのはなんと2,000年も前のことなのだとか。リオハへはサンセバスチャンから日帰りツアーでアレンジできます。
また、地元の人が自分たちのために作っている2つのお酒も忘れてはいけません。1つはブドウのお酒チャコリ、もう1つはリンゴのお酒シドラです。もともとは牧畜や農業を営む人の地酒でした。それがいつのまにか街の人にも広がったのです。サンセバスチャンのバルにも必ずあります。ぜひトライしてください。
まとめ
いかがでしたか? ラテン民族のスペインとフランスの中に存在する、独自の文化を持ちバスク地方。ここでは国よりも地域の文化が大切にされています。
フランスであるよりも、スペインであるよりも、先にバスクなのです。
美味しくって、楽しい旅ができる、そんなバスクに是非とも訪問してもらえればと思います。