目次

スメラ修道院にて
「トルコは何度も訪れた」という旅慣れた人も、東トルコを訪れた人はそう多くありません。
アルメニア国境に位置する辺境の世界遺産アニ遺跡。ここに残るのは、見たことのなかった中世の栄華。ノアの方舟伝説が語り継がれるアララット山の雄姿。断崖絶壁に佇む天空のスメラ修道院、不思議な猫と出会える紺碧のワン湖。古代王国の巨大石像が朝日に浮かび上がるネムルート山、そして黒海文化が息づく港町トラブゾン。
東トルコには歴史と神話、絶景が織りなす別世界が広がっているのです。
世界205の国と地域を訪問した井原三津子が久しぶりに訪れた東トルコで、誰も知らない感動の風景に出会いました。このコラムを読めば、きっとあなたも東トルコの辺境を目指したくなるはずです。
「千一教会の都」アニ遺跡は東トルコNo.1の見どころです!

目の前の渓谷の対岸はアルメニア
黄色や白の小花が咲き誇る緑の草原。のどかで牧歌的な風景の中に突如として現れるアニ遺跡。美しい小さな渓谷が目の前にあって、川の向こうはなんと、アルメニアだと言います。遺跡には、アルメニア使徒教会の聖堂や修道院の跡が広い土地に点在しています。
かつてはアルメニア人が暮らしていたところで、「千一の教会の都」と呼ばれるほど教会の数は多かったのです。10~11世紀には10万人もの大都市だったこともありましたが、今では「廃墟の美しさ」がこの遺跡の魅力となっています。

カテドラルは半分が地震で崩壊
東トルコを案内してくれたガイドのトラさんが言いました「夏に来るとすごく暑いけれど、今日は気持ちがいい風が吹いて最高ですね」5月下旬はいい季節でおすすめのようです。「それにしてもここまで来た日本人は初めてです」とのこと。ドライバーさんも初めて来たらしく、動画を撮って奥さんに送っていました。
広い敷地をゆっくり歩いて見て回るといろんな遺跡が見つかりました。浴場跡、11世紀のカテドラルは1930年ごろ落雷で建物が半分崩れて無残な状態になりました。現在修復工事中。緑の草原で花々に囲まれてぽつりと残された鐘楼は長い年月放って置かれた証です。観光客の姿もなく、ゆっくりとこの不思議な世界遺産を満喫できました。
南太平洋のソロモン諸島で零戦の残骸が放置されていたのも、真っ赤な花が咲き誇る熱帯の庭でした。なぜだかその時の風景を思い出していた私です。
国境の渓谷を行き来するのは許されていません。渡るのは気持ちの良い一陣の風のみ。
東トルコの旅から戻り、今なお一番心に残っているところと訊かれたら、私は迷わずこのアニ遺跡を挙げるでしょう。
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アララット山(アール山)の雄姿を拝む

ドウバヤズット郊外でアララット山を眺める
トルコとアルメニアの国境に位置するアララット山(トルコ語でアール山)。トルコ最高峰である大アララット山は標高5,137~5,165mで、年中雪や氷河におおわれて真っ白です。寄り添うように立つ円錐形の山が小アララット山で、約3,925m。
夏でも雪をかぶって真っ白なアララット山は美しく、その雄姿を眺めるだけで心が洗われるような気がします。

アララット山は大小二つが並んでいる
アララット山を美しく眺められるスポットは、東トルコの町ドウバヤズットと周辺のアルメニアの国境近くのエリアです。まさに東トルコを代表する絶景と言えます。
端正な円すい形であるため富士山に似ているとされるアララット山。実際は富士山より約1,360mも高く、山頂には氷河を抱き、大小二つの峰を従える雄大な休火山です。乾燥した高原地帯から孤高にそびえる姿は、富士山とはまた違った神秘的な美しさを感じます。
ノアの方舟が発見された場所とは!?

ノアの方舟が発見された場所
ドウバヤズットの郊外にあるノアの方舟が発見された場所に行ってみました。そもそもアララット山と言えば、ノアの方舟がたどり着いた山と信じられ、キリスト教徒やイスラム教徒の聖地ともされています。
ドウバヤズット郊外の山腹にある船形の地形で、1959年発見後「ノアの方舟ではないか」として世界的に知られるようになりました。

看板にもノアの方舟のことが書かれています
上から見ると舟の形に盛り上がり、文献に出ている大きさと深さと一致するとか。科学的に証明されたわけではないけれど、信じている人は多いそうです。
隣接するミニ博物館には「ノアの方舟の破片」も誰でも触れそうなところに無造作に展示してありました。アルメニアの方では、同じ「ノアの方舟の破片」が、世界遺産の教会の秘宝室に大切に安置されていたのを思い出しました。ところ変われば扱いが変わる!?
このエリアはトルコとアルメニア、ジョージア、アゼルバイジャン、イランの国境を成していて、自然が豊かで美しい場所にあり、不思議な魅力を感じたのでした。
アララット山を望む壮麗なイサクパシャ宮殿

背景には岩山が聳えるイサクパシャ宮殿
ドウバヤズットの高台に建つイサクパシャ宮殿は、1685年に建設が始まり、約100年の歳月を経て1784年に完成。オスマン帝国屈指の壮麗な宮殿なのです。
アララット山をはじめとする雪をいただく山々や緑の草原を背景に映える色合いの赤レンガ色の宮殿の姿はユニークで、まるで天空の宮殿のよう。
オスマン様式にペルシャやアルメニアなどの建築様式が融合した独特のデザインも見どころです。

宮殿観光に来ていた家族と記念写真
戦争や地震を乗り越えながら現在まで大切に保存され、精巧な石彫装飾や中庭、ハーレム、食堂、モスク、ハマムなど往時の華やかな暮らしを今に伝えています。
シルクロードを見渡す絶景とともに、東トルコを代表する歴史遺産として多くの旅人を魅了しています。
ドウバヤズットの南東5kmに位置するので、ノアの方舟の観光と一緒に訪れましたが、なかなか見る価値のある宮殿だと感じました。
天空の修道院 それがスメラ修道院

断崖に張り付いたみたいなスメラ修道院
今回の東トルコで、気に入ったスポットベスト2はこのスメラ修道院でした。
スメラ修道院はトラブゾンを訪れるなら必見の場所といえます。トラブゾンの郊外に位置し、標高1,200m、山岳地帯の断崖絶壁に張り付くように建てられているので「天空の修道院」という呼び名があります。
ギリシャ正教の修道院で、外にも美しいフレスコ画が残されています。創建は4世紀頃で、主要部分は13~14世紀に建てられたと言います。

スメラ修道院のスカーフ売りのお姉さんと
途中まで車で行って、ミニバスに乗り換え修道院の登り口に着いたら、そこからは坂道や階段を歩いて上っていきます。全景を見る展望台は少し遠いですが、崖側エリアの洞窟教会に入場して見学可能。落石対策のため、金網が設置されています。まさに「崩落のリスクと闘いながら公開されている断崖遺跡」でもあるのです。
あと楽しかったのが道中の露店でした。飾りのついたきれいな紫のスカーフを買って、頭に巻いてもらいました。トルコの目玉様も付いています。トルコ人になった気分。
そして隣の屋台の茹でトウモロコシを買って食べました。こんなちょっとした楽しみも、旅の思い出に残るものです。日本に帰ってからそのスカーフは折りたたんで大切にクローゼットにしまってあります。また使う日が来るといいなあと思います。
トラブゾンのシーフードグルメは最高!

お店の看板
海辺の町だけあって、トラブゾンには黒海で水揚げされた獲れたての魚を使った美味しいシーフード店がたくさんあります。
おすすめのひとつが「bordomavi」。高級感もあってお店の雰囲気も素敵だしスタッフも皆感じよく親切です。
トラブゾンの名物と言えばハムシ(カタクチイワシ)。から揚げにしてレモンを搾って頂きます。アジも同様に、頭から尻尾までかじれる香ばしいから揚げがベスト。カタクチイワシを加工熟成させたものがアンチョビでこれもトラブゾン名物です。

店員さんとも記念写真
黒海のスズキもトマトソース煮込みで頂きます。ボイルポテトやピクルスなど、前菜の盛り合わせも多彩です。
甘みを抑えたミルキーな美味しさの名物ライスプディングはこのお店で気に入って病みつきになりました。その後デザートはいつもガイドさんにライスプディングがないか聞いてもらうようになりました。
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目の色が違う!ワン湖のニャンコ

目の色が左右で違う不思議な猫ちゃん
世界でも有数の猫好きで知られるトルコ人。そんな彼らにとっても特別の存在なのが東トルコのワン湖周辺に暮らすワン猫です。
世界的にも珍しいワン猫。真っ白な毛並みに、左右で瞳の色が異なる“オッドアイ”が特徴で、片方が青、もう片方が琥珀色なのです。その神秘的な姿から、「幸運を呼ぶ猫」として親しまれています。

ワン湖の猫グッズ。記念に買って帰ったキーホルダー
水を嫌がらず泳ぐことでも知られ、「泳ぐ猫」と呼ばれることもあります。
ワン猫保護・研究センターがあり、純血種の保護・繁殖が行われています。地元の人々はワン猫を地域の誇りとしており、観光ポスターやお土産にも数多く登場します。
愛らしい姿は東トルコを代表するシンボルの一つでもあります。美しいワン湖とともに、この地ならではの不思議な出会いを楽しみました。
私はこのセンターを訪れた時から、この愛らしい猫のことを「ワンコ(湖)のニャンコ」と呼ぶようになりました。
神像の首がごろごろ!世界8番目の不思議 ネムルート山

朝陽に染まり神々しい風景を見せてくれる
標高約2,150mのネムルート山。トルコ東部にあるネムルート山(ネムルートダーゥ)はなんと山頂に世界遺産の巨大な神像があります。
紀元前1世紀、コンマゲネ王国のアンティオコス1世が自らの陵墓として築いたとされる山。山頂には、高さ約8~9mにも及ぶ神々や王の巨大石像が並び、圧倒的な存在感で見る者を圧倒します。

時間帯で刻々と色が変わる
地震などで長い年月を経て石像の頭部が台座から落ちた神秘的な光景は、この地ならではの見どころです。
世界8番目の不思議と称される巨大神像の日の出の風景はまさに絶景。東トルコで指折りの必見スポットと言えるでしょう。
親日的な優しい人々がいっぱいの東トルコが大好き
英語も全然通じないけれど意気投合して記念撮影!(ローカルレストランにて)
トルコを旅行していて感じるのは、トルコ人は親日的で日本人にとても親切だということ。とりわけ東トルコを旅していると、その優しさは感動的なほどでした。
地元のトルコ人も他のエリアからきているトルコ人観光客も皆日本人が大好きだと言います。少年や少女はとりわけ日本のアニメが好きで、それが高じて日本人が好きすぎて、日本人を見ると声をかけてきて一緒に写真を撮ろうと言います。色々話が弾むこともあります。
こちらもレストランのスタッフ。皆さん気さくで優しい
勉強中の日本語で話しかけてくる少女もいました。皆可愛いです。家族で屋外テラスでランチを食べていた家族が、私たちを見て「中国人ですか?」と聞いてきました。いえいえ日本人ですと答えると、突然彼らが皆満面の笑みを浮かべ、おお、日本人は大好きです…とひとしきり賞賛が始まるのです。私たちは中国人は好きじゃありませんという人にもよく出会いました。
いろんな話をして一緒に記念写真を撮ると、もう前からの友人のような気持ちになって、別れるのさえちょっと残念な気持ちになってきます。親日ならぬ、私はすっかり親トルコです!
東トルコの美味しいお食事にはまりました!
ハムシ(カタクチイワシ)のから揚げは香ばしくて最高
世界3大料理のひとつに数えられるトルコ料理。今まではそんなに美味しいと思ったことがなかった私。ところが今回東トルコを旅して、食べた料理が今までにない美味しいものばかりだったのです。
黒海沿岸のシーフードはもちろん魚が美味しいけれど、内陸の料理も捨てがたい。今回内陸で食べたベストレストランのひとつをご紹介いたします。
エルズルムの「ASPAVA」。チキンケバブの美味しい店ということでガイドさんが連れて行ってくれたお店。MEZEという前菜としてテーブルには小皿がズラリ。キムチ風玉ねぎ、茄子のペースト、ニンジン・キャベツのマヨネーズソース和え、チャパティ風のホブス。
ズラリと並んだ前菜はどれもが美味
それに加えて大皿のサラダ。鉄板に乗って出てきた熱々のキノコのチーズ焼き、最高!フレンチフライは揚げたて。チーズピザはすごく美味しくてこれだけでも満足です。細いピーマン添え。
チキンケバブの串焼きはさすがにいい味のチキンでした。付け合わせのサフランライスやホブス、玉ねぎサラダ、細長い大ピーマンの炭火焼き。
ちなみに田舎なので英語が通じないけれどスタッフは皆さん親切で良い人ばかり!
他の店で食べた茄子のケバブも焼きナスみたいな食感でなかなかの味わいで病みつきになりました。デザートでも病みつきになったライスプディング。おいしい店をガイドさんに聞いて食べてみてほしいです。甘さ控えめのがベスト。
東トルコでの特徴はなぜかお酒のないお店が多いこと。ホテルもレストランも、ビールは置いてないと言われます。ムスリムの国トルコですが、それ以外の地域では普通にお酒が出るので、東トルコは特殊です。イスラム文化が色濃く残る保守的な地域のためだそうです。しばらくはお酒抜きで過ごしたのでした。

まとめ
東トルコを代表する素晴らしいアニ遺跡は必見
東トルコには、まさに知る人ぞ知る魅力あふれる秘境がたくさんありました。まだまだ日本人には知られていない、日本人がめったに訪れることのないエリアかもしれません。
でもオーバーツーリズムのイスタンブールやカッパドキアだけがトルコではありません。もっと静かでのどかで人々が親切な楽園のような場所があったことを、今回、私は知りました。そして東トルコのことが大好きになりました。
きっとトルコの新しい良さを見つけることができる、東トルコにも、ぜひ行ってみてください。
ヘルシーで美味しい料理にもはまりますよ!
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