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交河故城/2025年4月より石窟見学公開
東は中国、西はパキスタンやアフガニスタンを越えてヨーロッパまでを繋ぐ交易陸路「シルクロード」。6〜9世紀頃、主に絹や香辛料が商人達により行き来されていました。西安を起点に敦煌までのルートを河西回路と呼び、敦煌の以西は天山北路と天山南路に分かれ、更に南路は北道と南道に分かれ西へ向かうルートとなります。ラクダに荷物を載せ、何日もかけて砂漠を渡る商人達、シルクロードと聞くと何故かロマンを感じずにはいられない人も少なくないでしょう。また、小説「敦煌」を読んでかの地に憧れた人もいるはず。そんなシルクロードの街であるウルムチ〜カシュガル〜トルファン〜敦煌についてご紹介します。
浪漫でしかない砂漠の大画廊「敦煌」

圧倒される仏教石窟「莫高窟」
かつて沙州と呼ばれた町敦煌はゴビ砂漠とタクラマカン砂漠に囲まれ、古くから交易の中継点として重要な役割を担っていました。東西の様々な人々が行き交う事により、文化も伝わり「砂漠の大回廊」と呼ばれる世界遺産「莫高窟」が造営されたのです。新疆の石窟は外敵イスラム教勢力により破壊されてしまっているのに対し、莫高窟は乾燥した地である事と町から少し離れた場所で砂に隠されていた事もあり、かなり保存状態がよい壁画が残されています。まず莫高窟を見学する前に2本の映像を見せられ、その後シャトルバスで莫高窟に向かいます。莫高窟では言語毎にガイドが付き、753窟の内見学出来る窟の中で8窟(オフシーズン12窟)を案内してくれます。日本語ガイドの説明は解り易く時代によって変わる色使いや壁画の意味など大変興味深いものです。

鳴沙山の中にあるオアシス月牙泉
莫高窟と並び敦煌に来たら100%の人が訪れる、鳴沙山・月牙泉。砂石のゴビ砂漠が途切れ、突如現れる砂山、鳴沙山。タクラマカン砂漠の東端の一部で、5色の砂が混じる美しい砂山です。この鳴沙山の麓に、永遠に枯れる事のない泉があり、三日月型をしている事から月牙泉と呼ばれます。砂山を登る際に靴に砂が入らない様、入口では靴カバーが借りれるので(1人20元)、是非借りましょう。この砂丘をラクダに乗って4キロ程歩く事も出来ます。(1人130元)または、カートに乗って砂丘入口に行く事も。砂丘には木の梯子道が2路あるので、そこを辿ると歩き易く頂上まで楽に登れます。頂上からは敦煌の町、月牙泉が見下ろせ、また背後に広がる砂丘も美しいの一言です。この砂丘もシルクロードとして多くの人々が行き交っていたと思うとロマンを感じぜぬにはいられません。
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ポプラとぶどうのオアシスの町「トルファン」

火焔山の中にひっそりと残るべゼクリク千仏洞
敦煌から列車で4時間、ウルムチから車で2時間の南新疆にあるオアシスの町トルファン。シルクロードの天山北路と南路の分岐点にあたり、交易には大変重要な町でした。今のトルファンは中心部こそ派手なネオンを放つビルもありますが、ポプラの並木道とぶどう畑が広がり、近郊には火焔山などのダイナミックな自然も広がるやはりシルクロードの町です。

火焔山
トルファンで必見、世界遺産の「交河故城」は6世紀に築かれた城址遺跡ですが、川が要塞となった事で近代まで荒らされる事なく保存状態がよく遺されています。石窟内部の美しい壁画も公開が始まりました。また、同じく世界遺産の「高昌故城」は玄奘がインドに向う途中に滞在したことでも知られますが、とにかく広い。カートに乗って遺跡の中を走り回るのも楽しいです。ダイナミックな火焔山の中にある仏教石窟「ベゼクリク千仏洞」も必見と言えます。ただ石窟内の多くの壁画や仏像は破壊され、残るのはほんの一部だけ。それでもこの隠された場所にウイグルの仏教寺院があった事がわかる貴重な史跡です。これらは町から少し距離もあるので、トルファンには最低でも1泊はしたいですね。
9割がウイグル族の町「カシュガル」

旧市街(老城)
中国西端、古くは東トルキスタン西部の都市として栄えたカシュガルは9割がウイグル族で占められます。町中にはウズベキスタン系の顔立ちの人が多く、中国にいる事を忘れてしまう程。ウイグル族の町なのに、国は中国。モスクの上にも中国国旗がはためいているのはちょっと不思議な情景です。宗教も言語も全く違う民族が共存していられるのは、お互いを尊重しているからこそ。かつて西域と呼ばれたこの地はいまでも西域と呼ばれるのがふさわしい異国感溢れる町です。

イスラム色の濃いお土産の並ぶ旧市街
この町中で観るべきものは中心部に集まっているので、1泊すれば市内は十分楽しめます。必見は歴史地区老城。元々ウイグル族が住んでいたエリアで、古くなった建物を建て直し、救急車両も通れる様に道を広げ、歴史地区として整備されました。東側はお土産屋さんが軒を連ね、西側は職人街として楽器や銅製品を扱うお店が並びます。中には何代にも渡り、職人を受け継いでいるお店もあり、今も尚その場で作り続けています。この老城内には雰囲気のよい民宿も出来始め、観光客を更に増やしています。(ただし民宿には外国人は泊まれません。)細く細かい道も多く迷路の様になっているので迷子になりがちですが、処々に案内板があるので、大変解り易くなっています。また、このエリアの中にイスラム寺院エイティガール寺院がありますので、是非立ち寄ってみましょう。歩くだけでも楽しいエリアです。
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パミール高原にある美しいカラクリ湖

背景の山々が壮大なカラクリ湖
カシュガルから約200km、約7,500m級の山ムズマーク・アタ山、コングール山の麓、標高3,600mの高地にカラクリ湖はあります。この辺りは4つの山脈が集まるパミール高原にあたり、湖は沢山の山々に囲まれています。カラクリ湖に向う朝、辺境管理局に寄り通行許可書を発行して貰ってから出発します。途中ウパルと呼ばれる、ウイグル族が住む町最西端の町でランチを購入し、約4時間をかけて湖を目指します。

カラクリ湖とパオ
ポプラの並木の街を過ぎ、山の中に入り込むと、周りの風景が一気にダイナミックな岩山に変わってきます。道路の両側を色の違う岩山が迫る風景は、日本ではなかなか見られない迫力の風景です。検問で許可書を提示し、一本道のカラコルムハイウェイを進むと雪山が近づき、そしてまもなく湖が現れます。雪山を背景にグリーンの湖面が美しいカラクリ湖です。湖畔には観光用のラクダや馬が沢山いて、多くの中国人観光客が利用していました。ただ美しい湖がそこにあるだけでいいと思うのですが、商売に繋げるのが中国らしいです。湖畔には宿泊施設やレストラン棟も建設中ですので、ますます賑わってしまう?気配です。カラクリ湖は距離がありますが、道中の大自然も楽しめるので、カシュガルに来たなら行くのがおすすめです。
新疆の首府 大都会ウルムチ

ウルムチ近郊の天池 都会から離れて山々が美しい
ウルムチ、と名前だけ聞くと何となく砂漠にある緑のオアシスの町をイメージするかもしれませんが、ウルムチは高層ビルが建ち並ぶ大都会です。この地は古くは前漢時代に中国に属するも、度々遊牧民族に独立国家を建国されたりと、複雑な歴史があります。ようやくウルムチとなったのは明代からですが、落ち着いて発展し初めたのは1955年中華人民共和国の一部新疆ウイグル自治区の首府になってからで、また2,000年に入ってからは目覚ましい発展ぶりとなっています。

国際大バザールでは是非ドライフルーツを試食したい!
ウルムチで外せないのがバザール。ウルムチには漢族、ウイグル族、カザフ族を含め42の民族が住んでいます。その西域の民族の衣装や、装飾品、また名産のドライフルーツやナッツが並び、エキゾチックな雰囲気にトルコやモロッコに迷い混んだ気分に。一瞬ここが中国だと言う事を忘れます。近郊の見どころとしては天池。市内から1時間程のボゴダ峰中腹にある湖で晴れた日は美しい山々が見渡せます。4月中旬まで水はまだ凍っている為、遊覧船は運行がありません。
シルクロード高速鉄道

揺れもなく、快適な高速鉄道
シルクロードの旅に欠かせない高速鉄道は、西安〜ウルムチ(2025年現在)間を結んでいます。風の強い砂漠地帯において、防風壁を持つ高速鉄道は欠航の心配のない重要な移動手段となっています。毎日多くの人々が利用するウルムチ駅は空港の様な広さ。切符はなく、全て身分証明書、パスポートに結びつかれていますので、ゲートで見せて改札を入ります。もちろんセキュリティも厳しく、飛行機並にチェックされ、列車には警察官も同乗します。山間を走る列車は時速約180~220キロ、平地は280~300キロと速度が違うと列車の種類は区別されますが、いずれも同じ車両を利用する高速鉄道です。

座席も指定なので安心
クラスは一等、二等がありますが、二等でも日本の新幹線の普通席と変わらず広さもあるので快適に過ごせます。トイレもトイレットペーパーがあるほど綺麗で、給水器もあります。運行中も掃除のおばさんが通路をモップで掃除、ゴミまで集めに来るのには驚きです。また、車内販売もあり、ドリンクやスナックの他、お土産などもカートで売りにきます。新疆ウルムチ〜蘭州あたりまでの車窓は砂漠だったり山脈だったりと広大な大地が広がり、いくら眺めていても飽きる事がありません。飛行機でさっと過ぎてしまう景色をゆっくり眺めながら移動する列車も旅情溢れいいものです。高鉄の他にも寝台列車の走る区間もあるので時間はあるけど費用は抑えたいと言う方におすすめです。

まとめ

夜市でウイグル料理
古くは商人達が行き交った道シルクロード。この道のりは山あり砂漠ありと険しく長く、また様々な民族が衝突し支配を繰り返している土地でした。それでも立ち止まる事なく、悠々と越え続けていた商人達がいたからこそ点と点か結びつき、このシルクロードが出来あがったのでしょう。当時宿場町であった街々は繁栄の軌跡を残し、素晴らしい史跡となって今の私達に見せてくれます。また、そこにある大自然も変わらぬ姿のまま、感動を与え続けてくれています。

エイティガール寺院
新疆ウイグル自治区もウルムチやカシュガルなど、北京乗り継でその日のうちに到着出来るのが隣国のいいところ。新疆は外国人に対し、インターネット環境を提供してくれませんので渡航前に準備し、また支払いアプリ(we chat)もスマホにダウンロードしてからお出掛けください。また現金の両替も日本出発時に空港でお済まいただくと安心です。ぜひ浪漫溢れるシルクロードへの旅へ!
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